研究課題
本研究は、透過電子顕微鏡中の試料の局所領域の温度を正確に測るための、ナノサイズのデバイスを創製することを目的とする。フィラメント直接加熱型試料ホルダー、集束イオンビーム(FIB)加工装置を組み合わせることにより、Wedge Shape 試料やNeedle Shape試料を作製し、試料の融解現象にともなう固・液界面位置の温度依存性によりnm サイズの位置精度で局所温度を正確に測定することを目指す。26 年度は、昨年度の結果を元に最も安定して作製でき、かつ広い温度範囲で固・液界面の移動が観察できるSi-AuのNeedle Shape 測温体の作製および性能検討を行った。昨年度の結果より固・液界面の移動度が、バルク近似モデルと比較して移動係数が一桁近く大きくなった問題を解決するために、試料作製法の改良を行った。試料表面に塗布するダイアモンド粉末サイズを、3μ程度から、8ミクロンと大きくし、Ar イオンミリングでイオンシャドウ時間を20分程度から120分に延長し、試料表面に残留するAuの量を大幅に削減した。また、この結果Needleの頂角は18°程度のものを安定して作製することが出来るようになった。固・液界面の形成を、共晶温度である363℃近傍で観察でき、過熱・冷却に伴いほぼ可逆的な固液界面の移動を観察することが出来、温度計としての利用の可能性が確認できた。温度に対する固・液界面移動どは、状態図より推定した値の数倍となったが、界面エネルギーを取り込んだ熱力学モデルを用いることで温度誤差5℃以下に補正を行うことが出来、ナノサイズの温度計を作製することが出来た。また、界面エネルギーを取り込んだ熱力学モデルを用いることで、Au-Si液相とSi固相界面の界面エネルギーを推定できることが分かった。
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