研究課題
本年度は、光電子放射顕微鏡(PEEM)に時間分解2光子光電子分光(2PPE)を取り入れ、マイクロメートルスケールで起こるキャリアダイナミクスを検証する実験を行った。PEEMは50nm程度の高い空間分解能を有するという利点があるが、光電子放出されたすべての電子が結像に関与するため、エネルギー分解能が乏しいといった問題もある。本研究では、チタンサファイヤレーザーの二倍波と三倍波を同時にPEEMに照射できる光学系を新たに構築し、PEEMを2光子励起仕様とすることで、光励起・脱励起過程の局所依存性の検証を試みた。エネルギー準位が既知の有機薄膜を対象に時間分解測定を行うと、特定の占有・非占有準位間の電子励起を選択的に起こすことができる。前年度までに報告したグラファイト上のルブレン有機薄膜の2PPEでは、励起・脱励起のメカニズムがよくわかっている。通常の時間分解2PPEをルブレン単分子膜に適用すると、LUMOに励起された電子の脱励起は非常に速い時間スケール(パルス幅以内の時間)で脱励起が起こる。これは、分子基板間相互作用が強いためであると考えられる。一方、多層膜では数ピコ秒程度で脱励起が起こることが確認されているため、構築した2PPE-PEEMシステムにおいても脱励起現象の空間的描像が得られることが期待される。構築した光学系の評価を行うため、当初はグラファイト基板で時間分解測定を試みたが、時間トレースに周期的振動が乗ることが判明した。これは実際のグラファイトの励起電子の寿命を捉えたものではなく、時間分解ステージの老朽化によるものであることが判明したため、新規光学ステージを導入して改善を試みた。1層膜から2層膜程度の膜厚では部分的に島状成長する。特に、2層膜領域では特定の励起波長によって分子島が明るく観察されたことから、LUMOに励起された特定の電子状態を捉えているものと考えられる。
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