研究課題/領域番号 |
24656039
|
研究機関 | 豊田工業大学 |
研究代表者 |
吉村 雅満 豊田工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40220743)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | グラフェン / 化学気相成長 / フラーレン / 摩擦 / プローブ顕微鏡 |
研究概要 |
グラフェンは炭素六員環の単層シートであり,グラファイトを構成する物質である.グラフェンの簡易製造法が2004年に発見され,優れた電気伝導性と機械的特性をもつことから,主にエレクトロニクス分野で注目されている.一方、同じ炭素構造を持つため,フラーレン(C60)を利用したナノベアリングの受け軸基板としての新規機械材料としても注目されている.このナノベアリングは,将来の先端医療やバイオナノテクノロジーを担うナノマシンにとって,摺動部分の凝着を防ぐ点で不可欠である.本年度は,C60が転がるのに適した大面積かつ高品質のグラフェンを合成するため,銅(Cu)触媒基板上の化学気相成長(CVD)法によるグラフェン合成を行った.実験として、熱CVD装置により、混合ガス中 (Ar/CH4 (500 sccm),H2 (8 sccm)) での成長後(一次成長)、グラフェンドメイン間を埋めるためCH4ガス(0.75 sccm)を加えて3分間の成長(二次成長)を行った.合成したグラフェンは走査型電子顕微鏡(SEM)とラマン散乱分光法で,形態観察と結晶性、及び層数評価を行った. まずは成長温度依存性を調べ、1030度で高品質のグラフェンができることが判った。しかしながら、表面に粒子状の不純物が残存し、成長を阻害していた。ドライアイスを用いてガスの純度を高めたところ、密度が減少することを突き止めた。次に、2次成長により、グラフェン間をカーボンで埋めることにより、連続膜を作製できた。但しラマンによる構造評価により、境界部には欠陥が導入されていた。 以上のように1年目として、やや欠陥は残存するが、十数ミクロンサイズのグラフェン膜の合成に成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
グラフェン合成装置を導入し、立ち上げるところから開始し、集中実験を行うことで、数十ミクロンサイズのグラフェン成長に成功した。また、これを基板に転写すべく、連続膜の成長が可能であることも示した。これで舞台となる基板材料ができたことになる。 一方、フラーレン蒸着膜の作製にはすでに取りかかっており、原子間力顕微鏡による評価もすすめている。
|
今後の研究の推進方策 |
1.転写技術の完成(PMMA、エッチング法によりCu上のグラフェンを剥離する):PMMAが残存しない条件を見つける。 2.フラーレンの蒸着(真空蒸着法によりフラーレン単分子膜を作製する):単分子膜の制御は基板温度、蒸着スピードを変化させて条件を見つける。原子配列、薄膜構造はプローブ顕微鏡により測定する。 3.プローブ顕微鏡による機械特性をはじめとする物性評価:機械特性はフリクションモードを用いる。また電気特性は接触モードで電圧を印加することにより、構造変化とともにイメージングをして評価する。 次年度に研究費が生じたのは、既存のCVD装置を使用したため、維持費や消耗品費が少なく抑えられたことによる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
熱CVD装置の改良費、フラーレン蒸着装置作製費、高性能カンチレバー(プローブ顕微鏡)購入に充てると共に、国際会議に参加、またはジャーナルに論文発表することで、研究成果を公開していく。
|