グラフェン(G)は炭素六員環の単層シートであり,グラファイトを構成する物質である.一方、同じ炭素構造を持つため,フラーレン(C60)を利用したナノベアリングの受け軸基板としての機械材料としても注目されている.このナノベアリングは,将来の先端医療やバイオナノテクノロジーを担うナノマシンにとって,摺動部分の凝着を防ぐ点で不可欠である.本研究ではG/C60/Gのモデルシステムを作製し、その機械的特性を調べることを目的とする。 1. C60が転がるのに適した大面積(サブミリメートル)かつ高品質のグラフェンの合成に成功している。具体的には,銅(Cu)触媒基板上の化学気相成長(CVD)法によるグラフェン合成の最適化を行った.Cu基板を3気圧で熱処理することにより、基板表面の清浄化とともに原子レベルでの表面構造制御(ステップ-テラス構造)を行い、核密度を低減させることにより大面積での成長を可能とした。ラマン散乱分光法で評価したところ、高品質で単層のグラフェンであることも確認した。 2.C60分子の超高真空蒸着装置を作製し、これを用いてHOPG基板上にモノレイヤーのC60分子を形成することに成功した。この表面を接触型原子間力顕微鏡で評価しスリックスリップに特徴付けられる摩擦力像の観察に成功した。C60/グラファイトでの摩擦挙動を解析すると、C60上ではグラファイト上よりも摩擦力が小さいことが分かった。 3.G/ C60/Gの系を実現するために、1で作製したGをPMMAを用いてシリコン基板上に転写し、その後PMMAをアセトンで除去した。その表面を観察したところ、G上に微小のPMMAが残存していることが分かった。 以上のように、各要素材料の作製プロセスや測定手法の最適化は終了したが、G上の不純物を綺麗にとり除く必要がある。目下、UV照射やその他の方法などのいくつかの手法を試している。
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