研究課題/領域番号 |
24656040
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
三木 一司 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, その他 (30354335)
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研究分担者 |
磯崎 勝弘 京都大学, 化学研究所, 助教 (30455274)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 近接場 / 光化学 / 流体デバイス / プラズモン |
研究概要 |
今年度の目標であった、ITO薄膜上の銀ナノ粒子配列(大面積近接場光源)は、以下の手順で作製に成功した。 手順: (1) 1-hexane-, 1-dodecane-, 1-hexadecane-thiolで修飾した銀ナノ粒子はAgNO3からAg(OCO(CH2)10CH3)を中間体として合成し、温度80℃でNEt3と混ぜて合成。(2) 5mm×5mmの平坦石英基板上にRFスパッター蒸着法によりIn2O3-10%SnO2をターゲットにして厚み10nmのITO膜を形成。このITO薄膜表面は1,6-hexanedithiol で表面修飾。(3) ヘキサン等の溶媒中に分散させた銀ナノ粒子は、修飾ITO薄膜をアノード、炭素電極をカソード、として電気泳動装置内にセットして、10 V/cm程度の電界を印加。(4) 溶媒蒸発中に、電界により銀ナノ粒子コロイドがITO膜表面に到達し、過飽和になっている気液界面近傍で核形成をし易くなり配列化を起こす。配列化はアルカンチオール基同士の疎水相互作用に基づく。 研究計画を立てた際に、ITO基板表面のラフネスで凹凸を無くす事と、我々が独自に開発した配列化手法の利用の、両方が重要と考えていた事は、実際にITO薄膜上の銀ナノ粒子配列(大面積近接場光源)作製上予想通りであった。但し、問題点が一つ明らかになった。走査電子顕微鏡により粒子配列の構造評価と、光吸収測定による光学評価より、銀ナノ粒子の酸化がアルカンチオール修飾によっても避けられない事が分かった。今年度の成果を活かして、ITO薄膜上の銀ナノ粒子配列が酸化されないように粒子構造を探索する方針です。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、透明電極ITO上に銀ナノ粒子を二次元集積化(稠密配列)して、大面積近接場光源を作製に成功しました。ITO基板上での銀ナノ粒子配列は、酸化しない状態では、ラマン増強効果等で良い増強ファクターが出ています。問題点は、銀ナノ粒子の酸化を防止できなかった事です。銀の300-1,000nmで強い近接場光を発生するのを保ったまま酸化を防止するには、銀ナノ粒子表面を金により薄くコーティングする事などで可能と考えています。粒子の光学的な性質は、薄い表面層の金よりはバルク中の銀によって支配されると考えているからです。研究の目的は着実に達していますので、概ね順調に進展していると判断しました。
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今後の研究の推進方策 |
本提案はナノテクノロジー分野に留まっていた近接場光を汎用性のある光デバイス(センサー等)や光化学分野へと発展させる事が目的です。当初は、透明電極ITO上に銀ナノ粒子を二次元集積化(稠密配列)して、大面積近接場光源を作製する予定でした。これは、銀ナノ粒子は、300-1,000nmで強い近接場光を発生できますが、酸化しやすいために利用が困難であったのを、表面修飾により避ける事が可能と考えたからです。しかし予想とは違って銀ナノ粒子の酸化を防止する事はできませんでした。方針を少し修正して、銀粒子表面の酸化を防止するために、銀ナノ粒子表面を薄く金でコーティングするコアシェル構造にする事で酸化を防止する方針です。ITO基板上で銀ナノ粒子の配列に成功していますので、ナノ粒子をコアシェルにすれば問題は解決すると考えています。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費 800 千円: 金ナノ粒子コロイド溶液 200千円、汎用溶媒・各種有機合成試薬 150千円、基板・プロセス試薬・ガス類 150千円、光学フィルター 300千円 旅費 420千円: 研究旅費(京大-物材機構間×6回、物材機構-スプリング8等)300千円、学会旅費(物材機構-京都等)120千円 謝金等 100千円: TEM試料作製費 100円 その他160千円: 論文投稿料、英文校正費等
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