研究課題/領域番号 |
24656041
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大寺 康夫 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20292295)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 光ファイバー / 回折格子 / 周期構造 / 導波モード共鳴 / 光ファイバーセンサー / サブ波長格子 |
研究概要 |
曲率を設けたサブ波長回折格子は、同心円状の波面を持つ光に対し、高反射率・高波長選択性の共鳴型ミラーとして機能する。そのような格子で囲まれた円形空間は極めて高いQ値を持つ単一モード光共振器として機能する。本研究はこの知見に基づく「共鳴導波型光ファイバー」の諸特性を明らかにし、光ファイバーセンサー及び光ファイバー型光源など、将来の応用のための理論的基盤を確立することを目的とする。本年度はまず、ファイバー構造の元となる円柱状共振器構造の数値解析を行い、外部からの共振モードの励振が可能であること、大きなモード断面積にて実効的に単一モード動作が可能であることを示したとともに、共振モードのQ値やモードの電磁界分布を明らかにした (学会発表1,2)。続いて周期格子における共鳴の物理を定性的に把握する目的で、周期構造部分を種々の方向に伝搬する波同士の波面変換機構と捉え、変換効率を散乱パラメータで表現することを試みた。その結果、共鳴の発生機構や、共鳴反射の波長帯を決定する要素などを明らかにした(学会発表3)。続いて、これまで申請者らが円柱型共振器の数値解析に一部使用していた、円柱座標系型の有限差分時間領域法(FDTD法)プログラムに、ファイバー構造の分散関係とモード分布を取り扱えるような改良を施した。これを用いてカルコゲナイドガラスとエアロッドを有する石英クラッド型共鳴導波型光ファイバーの導波特性の解析を行った。その結果、周期構造クラッドの反射率の曲率依存性、分散関係、導波モードごとの損失スペクトル、モードの電磁界分布などいくつかの基礎特性をを明らかにした(学会発表4)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計画段階では2年の研究期間のうち、初年度には以下を実行する計画を立てていた。 ①円柱座標系での光伝搬解析に向けたプログラムの改造--開発済みの有限差分時間領域法(FDTD法)の電磁界シミュレーションプログラムに、円柱座標系での面外光伝搬を取り扱う機能を実装する。数ヶ月程度の改造作業期間を予定。【現状】改造済みで、年度途中からファイバー及び関連する構造の解析に実践運用中。 ②環状配置サブ波長格子の共鳴スペクトルの解析--環状に配置した周期格子の共鳴特性をまず把握するために、例えばカルコゲナイドガラス/石英等の材料系を想定し、格子の曲率半径と・共鳴波長におけるピーク反射率、・共鳴線幅とQ値、・電磁界分布等を数値解析する。【現状】上記材料系における諸特性の数値解析を行い、H25.3月に国際会議で成果を発表した。 ③GPGPU計算機へのプログラムの移植-NVIDIA社製GPUボードを搭載した計算機を導入し、FDTDツールの移植を行う。非GPU型の現有計算機による解析作業と並行して実行。【現状】計算機は導入済み。ただし計算能力が高く、かつ①の改造によって少ない計算機資源で解析を実行できているため、今年度の計算にはまだGPUの力に頼らなくとも十分な成果を出せている。 【その他】計画にはなかった、円柱共振器の動作機構の解明、及び周期格子中の物理の解明を行い、結果を学会で発表した。これらはファイバー型デバイスの特性の把握に大いに役に立っている。
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今後の研究の推進方策 |
H24年度にファイバーの導波現象を明らかにすることができたので、それらの成果を踏まえ、下記の事項を中心に研究を遂行する予定である。 ①センシング応用を見据えたファイバー特性の解析:センシング応用では構成材料の屈折率の変化に伴う損失スペクトルの把握が不可欠であるので、これを解析する。具体的には熱光学効果による高屈折率ロッドの屈折率変動の効果を試算する。またファイバーに閉じ込め強化用として設けるアシストホールの位置・直径の、損失への影響を計算する。 ②種々の構成材料に対するファイバー特性の解析:前年度のカルコゲナイド/石英系構造に続いて、近年製造法が確立されたSi/石英系の微細ファイバー構造などに着目する。構成材料の屈折率差が導波特性にどのように影響するのかなどを調査する。 ③GPU計算機へのシミュレーションプログラムの移植:試算するファイバー構造の種類の増加に伴い、必要な計算機資源も増えると思われる。開発済みの有限差分時間領域法プログラムの改良を引き続き行い、GPU計算機での並列環境の構築を目指す。 さらに上記に加えて、光集積回路型の円形共鳴共振器など、共鳴導波ファイバーと同様の動作原理に基づく、作製の比較的容易な構造に着目し、その試作を通して共鳴光閉じ込めの実証、ファイバモードと類似の電磁界形状を持つ共振モードの存在の実証も試みる。 研究の全般を通じて、当初計画にある事項はもちろん、その周辺の知見も随時外部に発表することとする。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成25年度請求額と合わせて、平成25年度の研究の遂行に使用する予定である。
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