研究課題/領域番号 |
24656042
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
早崎 芳夫 宇都宮大学, オプティクス教育研究センター, 教授 (10271537)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 材料加工・処理 / 計測工学 / フェムト秒レーザー / 空間光変調 / 情報フォトニクス |
研究概要 |
横方向に対称な集光特性を有するラジアル時空間レンズを実現するためには,光軸の動径方向(ラジアル方向)に分光する素子が必要である.その一つである円形回折格子は,市販されていないため,特注か,自作をする必要がある. 一般に,特注の回折素子は200万円以上と高価であるため,研究の過程の中で,試行錯誤しながら,何度も繰り返し製作することは現実的でない.そこで,自作することを計画し,当初から予定していたレーザー露光による方法を用いて,円形回折格子を製作した.しかし,十分な加工精度が得られなかった.そこで,作製時間とコストは,レーザー露光に比べて要するが,電子ビーム露光を用いて,円形回折格子を作製した.その作製条件は,照射電子加速電圧80keV,ポジ型レジストZEP520Aを2インチSiO2基板に,ピクセルサイズ 200nm×200nm,直径3mm,格子間隔 312lp/mmと273lp/mmある.回折格子の高さを最適化していないので,回折効率は,1%程度であったが,フェムト秒レーザーパルスをラジアル方向に分光できることを確認した. 次に,チタンサファイアレーザー (中心波長800nm,スペクトル幅30nm,1kHz, パルス幅 < 45fs)を光源として,ラジアル時空間レンズの光学系を構築し,光軸位置に対する集光面でのパルス幅を評価した.焦点距離100mmの集光レンズ を用いた時,焦点では,パルス幅42fsであるのに対して,焦点から±5mmでパルス幅130fsに伸長し,時空間レンズの機能があることを実証した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初から計画していた,レーザー描画による円形回折格子の作製において,必要とする精度が得られなかった.これは,レーザー描画に使用されている自動ステージの精度に加えて,レーザー描画装置の設置場所の近辺に真空装置が振動源となっていたからである.なお,レーザー描画装置の移動を計画している.そこで,平成25年度に計画していた電子ビーム露光装置による素子の作製に切り替えることで,作製精度としては,十分なものが得られた.光学系の構築と評価も,当初の計画通りに行った.中空ファイバコンプレッサーによるサブ10fsパルスの発生に関しては,まだ,10fsパルスを得るための十分なスペクトル幅が得られていないが,スペクトルが広がることは実証できた.ラジアル時空間レンズの計算機シミュレーションもソフトウェアを作製しているところである.現時点で,前倒しして実施している事項も有り,ほぼ計画通りに進んでいると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
高い回折効率と耐エネルギー性のために,レジストの電子ビーム露光とドライエッチングとを組み合わせて,バイナリの円形回折格子を作製する.イナリの素子の場合,一次回折光の理論的な回折効率は40%であるが,ここでは,素子作製誤差等を考慮して,エネルギーを変化させながらの加工実験が実施できるようにするために,回折効率10%を目指す. 再生増幅型チタンサファイアレーザー(パルス幅35fs)を光源として,円形回折格子を用いて,ラジアル時空間レンズを構築し,焦点付近の光軸位置に対するパルスの特性を評価する.集光点でのパルスの特性を評価するためのパルス計測法である同軸周波数分解光ゲート法(FROG法)の計測装置を構築する.研究が順調に進めば,照射パルスエネルギーやパルス幅を変化させた時の加工径や深さを計測し,透明材料の加工特性を評価する. 回折格子の格子間隔により制御される回折角度,スペクトル幅,対物レンズの開口数によりラジアル時空間レンズの特性が変化する.これを計算機シミュレーションにより評価する. 引き続き,再生増幅型チタンサファイアレーザー(パルス幅35fs)から出射されるパルスを中空ファイバコンプレッサーによるサブ10fsパルスの発生実験を行い.発生されたパルスを評価する.
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次年度の研究費の使用計画 |
アメリカ及び大阪への成果発表のための旅費と学会参加費,光学部品や薬品等の消耗品を購入する.なお,備品購入の経費は計画していない.
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