本研究の目的は,集光の高い空間対称性を有するラジアル時空間レンズを実現し,その集光特性を明らかにすることである.本年度は,昨年度に得られた,時空間集光の実験結果を理論的サポートするために,計算機シミュレーションレンズによって,レンズパラメータの違いによる集光特性を明らかにした.計算は,既に実装済みのスカラー回折理論に基づく光伝搬計算により行った.アキシコンレンズ通過後の各波長の波面を円形回折格子からコリメートレンズ,対物レンズ,集光面までの回折計算を行った.パルスの波長幅19nm,アキシコンレンズの底角25度と屈折率1.453,円形回折格子の空間周波数273.6lp/mm,コリメートレンズの焦点距離200mm,対物レンズの焦点距離100mmとした時,その光伝搬は回転対称であり,回転対称の波面の干渉により光軸付近での強い強度ピークを発生した.ラジアル時空間レンズの光軸上でのパルス幅および強度ピークの変化も,時空間レンズとほぼ同一であった.時空間レンズでは周波数分布から分かるようにパルスフロントティルトを生じ,ラジアル時空間レンズでは周波数分布と同様に光軸から回転対称に時空間集光された.また,全方向からの干渉によりやはり中心に強い強度ピークを有した.以上の結果より,ラジアル時空間レンズの集光の縦横比は時空間レンズと比較して大きくなり,狭小な集光とった.ラジアル時空間レンズの特徴的な点として,時空間集光がなされているにもかかわらず,中心干渉による強度ピークによって相対的に周囲のピークが減少するためにパルスフロントティルトの効果がほぼ現れないことが挙げられる.結論として,ラジアル時空間レンズで集光されたパルスは時空間レンズと同様な軸方向特性と,中心に強い強度ピークをもつベッセルビームとなることが分かった.
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