研究課題/領域番号 |
24656043
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
中嶋 誠 千葉大学, 大学院理学研究科, 准教授 (40361662)
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研究分担者 |
末元 徹 東京大学, 物性研究所, 教授 (50134052)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | テラヘルツ波 / THz / 近接場 / 磁気光学 / 磁性体 / フェムト秒レーザー / スピン / イメージング |
研究概要 |
本研究は、テラヘルツ波分光の高空間分解能化を目指して近接場効果に関する研究を進める。特にテラヘルツ波の磁場成分や磁性体の磁気応答に着目していく。 金属探針を用いたテラヘルツ近接「電場」顕微光学系を構築し,基本となる近接場応答の取得実験を行なった。金属探針の先端曲率の大きさがおよぼす影響を調べ、高次のロックイン検出が検出感度の増大に有効であることを確認した。誘電体-金属構造に対して空間分解測定を行い,回折限界を大幅に超えた50μm程度(~λ/100)の超高空間分解能でのイメージングに成功した。 強磁性共鳴下の磁性体を金属壁に接近させると、磁性体の磁化と金属界面との相互作用によって磁化の運動がダンピングされ,共鳴周波数や磁気双極子放射強度に影響が出ることがミリ波帯の磁気共鳴実験において知られており(ウォール効果)、テラヘルツ帯でのウォール効果について調べた。ここでは磁性体としてBaフェライトを針状に加工したものを用い,これにテラヘルツ波を照射して、金属表面との距離を変えて応答の変化を調べた。現在この測定にて、距離による散乱強度の変化が捉えられており、さらなる詳細な測定を進めて行きたいと考えている。 さらにテラヘルツパルスの磁場成分が強磁性体透過時に示すファラデー回転効果を観察することにより,磁化状態を空間分解観察できることを示した。さらにこれを金属探針による伝搬光の射影と組み合わせることで,回折限界を超えた高空間分解能(~λ/5)で磁化分布の観察を行うことに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題の初年度である2012年度には、近接磁場効果を確認することを目的に研究を進めてきた。 現在、磁性体針と金属界面の間で生じるウォール効果に着目して研究をすすめており、実際信号強度の変化を捉えるところまでは進んでいる。この変化とウォール効果の関係を明確なものにする必要がある。現状、散乱強度が小さいために、信号の測定は非常にシビアなものであり、パルスTHz分光の場合は、共鳴周波数以外の成分がノイズ成分として寄与してしまう問題がでてきている。この状況を解決するために、現在のパルスTHz分光システムでの測定精度を上げる工夫をいくつか行なってきており、当初より格段に測定精度は高くなってきている。 金属探針とファラデー効果を組み合わせた方法にて、回折限界を超えた高空間分解能(~λ/5)での磁化分布の観察を行うことには成功している。
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今後の研究の推進方策 |
2年目にあたる2013年度には、これまでの測定を続けると共に、電場誘起の磁気応答の測定等も積極的に取り組むことを考えている。 パルスTHz分光システムでの測定を進めると共に、CW-THz分光システムにおいても散乱型の近接場測定を行いたいと考えている。CW-THz光源を用いることで、観測したい特定の周波数光のみを試料に照射し、観測することが可能になり、他周波数の光が迷光になるのを防げ、SN比の向上を期待できるからである。ウォール効果の確認のために、パルスTHz分光で、精密に散乱測定を行い散乱強度の変化を測定する。またCW-THz分光システムを用いて、単一周波数での測定を順次測定周波数を変えて測定することにより、応答周波数の変化を観測したいと計画している。 金属微細アンテナ構造を利用した磁場成分増強効果や、これとファラデー効果を合わせることで高空間分解能で磁化状態の測定ができると期待している。テラヘルツ波の磁場成分の可視化への取り組みも進める予定である。さらには2次元のメタマテリアルの測定を通じて、磁気応答を観測することも計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験系の改良のための光学部品や・探針および試料準備のための加工代に多くを費やす予定である。 研究成果発表のための旅費を計上する。
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