研究課題/領域番号 |
24656044
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
種村 拓夫 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90447425)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 電子デバイス・機器 / 光エレクトロニクス / ナノフォトニクス / プラズモニクス / 光デバイス |
研究概要 |
本研究では,半導体レーザなどのアクティブ光素子を多数集積した光集積回路(光IC)に,金属ナノ構造を用いたプラズモニクス技術を融合させることで,微小プラズモニック光ICを創製することを目的とする.新規に提案するプラズモニック集光器を用いることで,金属界面に局在するプラズモンを介して,回折限界以下の微小領域に効率良く光を閉じ込める.これにより,従来困難だったプラズモニック素子の多段接続,および,高効率な光入出力を可能にする.この過程を通じて,これまでの半導体/誘電体に基づく光IC技術に対するパラダイムシフトを引き起こし,集積度を極限まで高めた光LSIを実現することを目的とした. その成果として,平成24年度中に,鍵となるプラズモニック集光器の数値計算手法を立ち上げ,設計を行った.グレーティングの構造と周期を最適化することにより,集光効率を5倍近く向上できることを示した.さらに,素子の試作を開始し,フォトマスクの作製を完了した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに,本研究で出発点とするプラズモニック集光器の設計を行い,素子の試作を開始した.素子の設計には,3次元有限差分時間領域法(FDTD)による数値計算を用いた.本素子は金属材料を含むため,時間領域における解析が厄介であるが,ローレンツ・ドゥルーデ モデルにより金属の光学特性を精度よく近似することに成功した.素子の作製には,電子線(EB)描画装置を用いてパターニングを行い,ICP-RIEドライエッチングにより,微細グレーティング構造を作り込む.複数のグレーティング構造を一度に評価するためのプラットフォームを作製するためのフォトマスクの設計を完了し,素子の試作を開始したところである. 当初の予定に比べて,試作に関しては若干遅れ気味であるが,その一方で,設計に多くの時間を割いたことにより,予想以上の特性が期待できることが分かった.以上より,全体としては,おおむね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の前半に,.側面グレーティング構造を作製するためのナノ加工技術を確立させ,プラズモニック集光器の試作を完成させる.評価を行い,グレーティングによる集光効率向上の効果を検証する.さらに,構造を最適化し,10%以上の結合効率を目指す.最終的には,レーザや半導体光増幅器(SOA)など,アクティブ光素子を一体集積したプラズモニック光ICの実現を目的とする.また,プラズモニクスを用いることで,光を微小領域に閉じ込め,金属界面にプラズモンを誘起することができるが,その結果として,光-電気相互作用や非線形光学効果を大幅に増強できる可能性が報告されている.今回実現するプラズモニック光ICをプラットフォームとして用いることで,これらの興味深い物理現象を実験的に検証し,新規光機能の開拓を目指す.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に本格化させる素子の試作に伴い,莫大な消耗品費用が必要となる.具体的には,蒸着源(金属,誘電体),薬品,フォトマスク作製費用,プロセス用ガラス器具などを計上する.並行して,素子構造の設計を継続するために,ソフトウェアライセンス費用が必要となる.また,本プロジェクトの成果を国内外で発表するために必要な旅費を計上する.
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