研究課題/領域番号 |
24656052
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
山本 裕紹 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 講師 (00284315)
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研究分担者 |
陶山 史朗 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 教授 (70457331)
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キーワード | ディジタルサイネージ / 直交ミラー / 空中表示 / 3Dディスプレイ / サーマルディスプレイ / LED |
研究概要 |
本研究では,直交ミラーアレイが中空構造を持つ点に着目して,可視光による空中3D視覚ディスプレイ機能に加えて,遠赤外領域の電磁輻射の収束によるサーマル3D表示,さらに,疎密波である音波を用いた空中結像に挑戦する.<光と熱と音>の空中フローティング表示を実現することが本研究の主目的である.3年間の研究期間での達成を予定しており,第2年度となる平成25年度には,前年度に原理を実証した<光と熱>の空中結像に関する詳細な実験と成果報告だけでなく,<光と音>の空中結像に関する実験を行った. 具体的には,音波の伝搬を妨げること無く,可視光情報を提示するために,リボン状のLEDを用いたLED表示ユニットを作製した.また,スピーカーを用いた可聴域の音波をサイズの異なる直交ミラーアレイに入射させて3次元空間での収束を試みた.さらに,音源の指向性を向上させるために,超音波ドランスデューサーアレイを利用して,可聴域のエンベロープをもち,超音波(搬送周波数40kHz)の超音波スピーカーアレイを製作した.音波ならびに超音波の空中結像について,最大サイズの直交ミラーアレイに入射して結像位置での音の局在性について調べた.実験の結果,これまでの熱の実験ほどには局在性が確認されないことがわかった. 加えて,前年度からの継続事項であるサーマル3D表示においては,2つの熱光源を設置したときの3次元分布を長ストロークステージを用いて測定した.その結果,熱源が結像する位置付近の温度分布は,熱源の配置に依存して変化することがわかった. 以上,本年度の実験により<光と熱と音>の空中フローティング表示の達成には,直交ミラーアレイの大型化が必要であること,光源・熱源・音源における遮蔽が空中像の局在化に影響を与えることがわかり,来年度の統合実験に対する指針が得られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
何も無い空中に熱で3D表示を行う世界初の試みには成功しているが,音の収束に関しては,光の空中表示や熱の空中表示ほどには顕著な局在性が得られていない.しかし,これは単純な直交ミラーアレイの利用だけではセンチメートルオーダーでの音が空中結像が物理的に難しいという事実によるものである.実験を通じて,音の空中結像においては,音の物理的性質と音に関する人間の認識が重要なファクターとなりえることがわかった.すなわち,音波の波長がサブメートルオーダーであるため,収束径をセンチメートルのオーダーにはできないこと,疎密波の伝搬と反射時において直交ミラーアレイ自体が振動して新たな音源になり得ること,さらに,観察者による音の局在性に関する認識は光ほどの空間分解能を持っているわけではないことを理由と考えている.音圧の空間分布によって物理的には音の局在性を実証するアプローチが想定されるが,直交ミラーアレイにより反射された音だけを測定するためには,厳密な音圧測定のための防音シールドルーム(工事費7千万円程度)が必要となり,萌芽研究で実施可能な範囲を超える. サーマル3D表示に関しては,大型直交ミラーアレイを用いることでサーマルカメラだけでなく,人が手を動かしても3次元的な局在性があること確認している.また,LEDの結像においては視覚的に3次元像を認識できている.人間の認識も重要なファクターであるため,これらを組み合わせた<光と熱と音>のマルチモーダル呈示を行う場合には,人は光と熱の感覚情報から音も同じ位置と認識できる可能性があると期待している. 以上により,萌芽研究で想定した<光と音>の空中結像に関する第2年度の目的については第3年度の統合実験で用いる要素技術と改良課題を実験的に明らかにすることができたため,概ね達成と自己評価している.
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今後の研究の推進方策 |
光と熱と音の空中フローティング表示を実現することを目的に研究を推進する.第2年度の成果により,音の収束は,光や熱の空中結像ほどには局在化しないことがわかったため,音に関する結像素子を光と熱の結像素子と完全には同じ位置に置かなくても空中像の位置に大きな影響を与えないことがわかったため,バルクの結像素子を2種類設置するような実現形態についても挑戦を行う.光源と熱源と音源の配置においては,第2年度の結果から,熱源を遮蔽しないように光源と音源を設置する必要があることがわかっているため,リボンLED等のスパースな光源を活用してこれらのマルチモーダルソースを構成する.これまでの設計による直交ミラーアレイは加工上の問題でメートルオーダーの大型化には適していないため,必要に応じてハーフミラー等を利用した大型空中結像光学系による空中結像についても検討する.これらにより<光と熱と音>の空中フローティング表示実験を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
来年度の<光と熱と音>の統合システムにおいて,音源,熱源,光源について,統合システム向けの設計と製作が必要であるため.これは本年度の実験により,音の空中結像実験より音の局在性は光や熱ほどには急峻ではないこと,複数の熱源を配置した実験により熱源の遮蔽が影響を与えることがわかったからである. したがって,統合システム向けに光源と音源と熱源を新たに製作するための予算を来年度に確保することとした. 光と熱と音の空中フローティング表示を行うための製作,実験,ならびに研究成果発表費用の一部に使用する予定である.
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