研究概要 |
まず,ナノレーザ加工のための加工条件の最適化のために,取り扱いが容易なZnO薄膜を対象に加工実験を行った。PLD法を用いて試料となるZnO薄膜をc-カットサファイア基板上に作製した。次に,これを加工するため, ZnO薄膜上に市販の直径1μmのシリカ微小球を分散させた溶液をスピンコート法により薄膜上に塗布した。このシリカ微小球を通して,ArFレーザ光を 290 mJ/cm2のエネルギーフルエンスで照射し,ビーズの配列に対応して周期1 μmの加工パターンを確認することができ,ZnO薄膜をシリカビーズのマイクロレンズ効果で加工できることを確認した。また,AFMにより計測した加工痕の寸法は,加工穴の直径約500 nm, 加工深さ40 nmであった。 次に,炭素蒸発熱CVD法を用いてZnOナノシートの作製を行い,光励起により発光特性を調べレーザ発振することを確認した。その発振の閾値は、およそ150 kW/cm2と見積もられた。薄膜の加工の場合と同様に,ナノシート上にビーズを配置して加工しようとしたが,薄膜の傾斜や表面に存在する凹凸の影響によりナノシート表面にビーズを配列することが困難であった。そこでビーズを配列した上にナノシートを設置する方法に変更し,直径1 μmのSiO2ビーズを用いて照射フルエンスを400mJ/cm2の時にZnOナノシートを加工することに成功した。しかし,加工したナノシートを光励起してもレーザ発振を確認できなかった。 これに対して,ナノシートの周囲をランダム形状に加工しても同様にランダム発振レーザ動作を実現できるのではないかとの着想を得て,さまざまな外周形状を持つZnOナノシートを光励起したところ,形状の複雑化に伴って,発振スペクトルがランダム化する傾向が確認され,当初の目的通りZnOナノシートを用いたランダムレーザーチップ実現の基礎を確立できた。
|