研究課題/領域番号 |
24656059
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
鳴海 康雄 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (50360615)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | パルス超強磁場 / 水素化銅チタン合金 / 平角線 / 非破壊100T / 高強度 / 高導電性 |
研究概要 |
本研究では、高強度と高導電性を兼ね備えた水素化銅チタン合金による革新的なコイル線材を開発し、パルス強磁場発生技術を用いて非破壊100Tを実現することを目的としている。24年度は主として母合金の開発から線材化への研究を進めた。具体的に実施した工程を以下に示す。1)母合金の製作:4Nの高純度銅と4Nの高純度チタンを1700度の以上の真空中で溶解して、3.2wt%チタンを銅チタン合金のインゴットを製作。2)均質化処理:窒素ガス雰囲気中で950度5時間の熱処理後に氷水で急冷。3)被膜除去:旋盤加工にて被膜の除去。4)タップ鍛造によるロッド製作:850度の熱間条件でタップ鍛造により32Φの銅チタン棒を製作。5)酸化被膜の除去。旋盤加工にて酸化被膜、析出物等の不純物除去。6)石英管封入:真空中で熱処理を行うために切削後(30Φ)の銅チタン棒を石英ガラス管に真空封入。7)溶体化処理:950度30分で熱処理後、氷水で急冷。8)線引き:冷間圧延により平角線(2mm×3mm)への加工。 この工程8において、30Φから冷間線引を行う中間過程である6 Φの段階で材料割れが生じた。そこで、線引きされた素線の一部を使い、強度試験と組織観察を行いながら中間焼鈍条件の探索を行った。また、クラックの入っていない素線の一部を使ってさらに冷間加工が可能かどうかの加工限界の試験も平行して実施している。これらの試験結果を元にして、最適な加工・熱処理条件を決定して最終的にコイル化に必要な平角線の製作を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度の研究計画は素材開発が主であるため、ある程度のR&Dが必要なプロセスが想定はされていたが、線引き作業の過程で生じた材料割れの影響で最終的な線材の形状にまで加工が進んでいない現状は、当初予定より若干遅延していると判断している。ただし、高強度線材を開発するという最終目標の中で、最後の線引き過程は素材の強度を決定付ける非常に重要な段階であるため、安易に工程を進めるのでは無く、条件を十分に吟味した上で最終的な加工工程に進むことが望ましい。材料自体の特殊性もあり、参考になる文献等も少ないため、条件出し作業は独自で行う必要がありそれぞれに時間を要するが、将来的に水素化銅チタンを種々の材料として応用を計ることも想定すると、加工熱処理条件の最適化はより一層重要である。既に熱処理条件の絞り込みはほぼ終えており、線引き加工の予備試験も25年度の早い段階で完了する予定である。従って、全体の研究進捗状況は半年遅れ程度で着実に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
25年度前半は線材化に必要な熱処理条件の確立と加工限界の決定を行い、最終的に2mm×3mmで長尺の平角銅チタン線を製作する。得られた素線の一部を利用して、強度試験と組織観察を行いながら導電性と引っ張り強度を両立させることができる水素化の条件出しを行う。その上で、長尺線の水素化を行い、実際のコイル製作に必要な平角線を25年度の中頃までに得る。得られる素材は裸線であるため、被覆処理を行って絶縁性・耐摩耗性の試験を行う。被覆線として得られた線材を使って小型のコイルを製作し、実際の磁場発生試験を行う。参照として、純銅、銅銀合金の線材でも同形状のコイルを作成して、比較試験を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
未完成な平角線への加工費用とその後に行う水素化作業費にそれぞれ250,000円、100,000円の使用を予定している。また、参照用コイルを製作するための材料として、純銅平角線の購入を予定しており、その費用として300,000円を予定している。その他、線材の熱処理、強度試験に必要な治具の製作費として約50,000円を計上している。
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