研究課題
ボールSAWセンサの多重周回伝搬を用いて、昨年度より広範囲における圧力測定を実現した。原理として、ランガサイト(langasite; LGS)製のボールSAWセンサ(周波数150 MHz,直径3.3 mm) を圧力可変の容器に設置し、多重周回波形を測定した。 減衰αは振幅減衰曲線を指数関数にフィッティングすることにより計算し、αを0 kPaに外挿することにより漏洩減衰とは無関係な減衰α_Pを決定し、式α_L=α-α_P により漏洩減衰(leaky attenuation;LA)の係数α_Lを求めた。多重周回により波形の計測精度が高かったため、理論的に求めた減衰定数の値にも、信頼性があることがわかる。実験では、圧力100 kPaのN2において波形を測定した結果、1 m (97周)伝搬した周回波が S/N=20で測定された。次に、3種類の圧力で測定された減衰曲線の対数表示を行った。200 kPaに加圧しても測定が可能であり、大気圧以上における耐久性が示された。LAの測定値の真空圧依存性においては、0.01 kPaに至るまで線形性が見られた。さらに、LGSの密度5750 kg/m3とSAWの速度2380 m/sを用いて近似理論により計算した結果(破線)は、ほぼ実験結果を再現できた。ただしわずかな差異があるが、これはSAWの速度が伝搬経路に沿って連続的に変化することにより説明し得る。これらの結果から、ボールSAWセンサが大気圧を超えて利用可能な真空センサを実現できることを示すことができた。またこれによって、当初の研究目的である、高真空から加圧域まで使える真空計の可能性を示すことができた。以上の成果は、半導体製造プロセスなどにおける真空度のロバストな計測法として、応用物理学的にも有意義な成果であると考える。
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圧電材料・デバイスシンポジウム2014 講演論文集
巻: 2014 ページ: 47-52
Proceedings of Symposium on Ultrasonic Electronics
巻: Vol.34(2013) ページ: 155-156
巻: Vol.34(2013) ページ: 381-382
http://www.material.tohoku.ac.jp/~hyoka/lab.html