研究実績の概要 |
◆意義:計測装置の非線形な特性は補正が難しく、誤差として扱われる事が多い。ランダム誤差とは異なり、データ積算によって低減できないので、計測の正確性を追及する上で、この影響を低減する事は非常に重要である。 ◆具体的内容:本研究による比ー位相変換法はほぼ一定な信号Rと計測信号Sとゼロ点信号Oを周期的にスイッチする事で得られる階段状信号に対し、その幾つかの高調波をキャンセルする信号を加算する事によって非線形性(INL)を低減する方法である。最終年度は特に理論的な側面に進歩があった。理論の詳細は省略し、その意義を述べる。 本方法では計測器の非線形性を計測と同時に低減できる(同時校正)が、2つの問題がある。①一つの高調波をキャンセルして得られる非線形性低減率は数10%に過ぎない。②実測時に位相計測するため、計測器の本来の応答周波数帯域を損ねてしまう。これらに対しては次のような解決策がある。A:特殊なバンドパスフィルタを設計して高調波除去に用いる。但し、適用範囲はINL < 100ppm程度である。B:非線形性のドリフトが大きくない場合、実測前に多点校正を行なう事ができる。校正用信号源(R,S,O)を準備する。S/Rに安定性は要求されない。この信号を比ー位相変換し、高調波キャンセルの有無による位相変化を計測しながら、比をスキャンする。得られた位相変化曲線を多項式近似し、理論に基づいて、元のINLを求める。実測時には、得られたINLを元にデジタル補正しながら計測する。 ◆今後:計測器の非線形性を取り除く事ができると、試料のわずかな非線形特性を検出できる。試料の非線形な光吸収はπ電子共役系で普遍的に見られるにも関わらず、その検出には特殊な高出力光源が必要とされる。低出力でわずかな非線形吸収が計測できるようになれば、キャラクタリゼーション手法として汎用できる。
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