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2012 年度 実施状況報告書

サブ・オングスローム波長でのXFELのフル・コヒーレント化の研究

研究課題

研究課題/領域番号 24656069
研究機関公益財団法人高輝度光科学研究センター

研究代表者

松原 伸一  公益財団法人高輝度光科学研究センター, XFEL研究推進室, 研究員 (90532135)

研究分担者 冨澤 宏光  公益財団法人高輝度光科学研究センター, XFEL研究推進室, 副主幹研究員 (40344395)
高橋 栄治  独立行政法人理化学研究所, 緑川レーザー物理工学研究室, 専任研究員 (80360577)
岡安 雄一  公益財団法人高輝度光科学研究センター, 加速器部門, 研究員 (90509910)
研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2014-03-31
キーワードラジアル偏光 / 高次高調波 / シードFEL
研究概要

THz からX線までの広範囲でのレーザ出力が可能な自由電子レーザ(FEL)において、出力のフル・コヒーレント化を行うための技術研究を実施している。現状のFELは、SASE光と呼ばれ高い空間コヒーレンスを有するが、時間コヒーレンスは制限されている。コヒーレント化のためには、FELの電子ビームに、外部からのレーザ光を重ねて一定の変調を与えるシードFELの技術が必要である。
具体的には、ラジアル偏光・シード光源を用いたシードFELの検討を行なっている。ラジアル偏光・シードFELは、ラジアル偏光シード光を集光したスポットに出来るZ偏光電場により、低エネルギー電子バンチに対して、エネルギー変調を与える。その後、その電子バンチを高エネルギーに加速するとともにバンチ圧縮することにより、このエネルギー変調を密度変調へ変換し圧縮する。この技法により、シード光源よりも桁違いに短い波長のシードFELを実現する。
現在までに、以下の研究項目を実施している。ラジアル偏光シード光による、電子バンチへのエネルギー変調を加える技法について、シミュレーションによる検討を実施し、実現可能な1つの技法を考案した。これにより、ラジアル偏光シード・FELが可能であることが確認できた。また、ラジアル偏光シード光を生成するための、基本波ラジアル偏光・高エネルギーレーザ光源を立ち上げた。そして、この基本波光源を用いて、ラジアル偏光・高次高調波の生成を試みている。世界でもラジアル偏光・高次高調波を生成した報告はまだなく、この光源の生成が本研究の最大のポイントである。並行して、シードFELに重要な電子バンチとシード光源との同期技術の研究を積み重ねており、直線偏光シード・FELにおいてシーディングの成功確率が、従来の0.3% から25%へ向上した。同期精度の向上により、ラジアル偏光シード・FELの実証試験の確度が向上する。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

申請時の計画通りに1年目は、遂行できており、研究を通しての達成度は、40%である。
ラジアル偏光シード・FELのシミュレーションによる検討を行い、Z偏光電場によりフル・コヒーレント化に必要なエネルギー変調が得られることが確認できた。しかし、申請当初計画していたシード光と電子ビームを同軸で入射し、重ね合わせることでは、十分なエネルギー変調が得られないことが判明した。シード光の位相速度と電子バンチの速度を合わせるために、電子ビームが偏向している箇所でシード光と電子ビームの重ねる方法を考案した。
基本波ラジアル偏光・高エネルギーレーザ光源を制作した。基本波ラジアル偏光生成のために、1/2波長板の角度を8パターンにずらした特殊光学素子を製作した。ダメージ試験を行い、本研究に耐えうる有効径20mmの光学素子とした。この素子と直線偏光の超短パルスTi:Sapphire レーザシステムを用いて、パルスエネルギー1mJ、パルス幅50fsの波長800nmの基本波ラジアル偏光光源を実現した。
このラジアル偏光光源を用いて、ラジアル偏光・高次高調波の生成の実験を行なっている。ラジアル偏光光源をArガス中で集光することにより、基本波と同じ偏光成分の高次高調波の実現を目指している。シミュレーションでは生成可能なことが確認できている。しかしながら、生成された高調波は、ラジアル偏光ではなく、ランダム偏光で現れている。原因を調査中である。
シードFELに重要な技術の研究、実施実績を重ねている。従来の直線偏光シード・FELの特性向上化を行った。特に、シードFELと同時に、シード光源と電子バンチの到達時間をEOサンプリング法により測定し、タイミング制御を行うことにより、シードFELの成功率が、従来の0.3% から25%へ向上した。ラジアル偏光シード・FELの実証試験を実施する際のキー技術が蓄積できている。

今後の研究の推進方策

現在までに、シミュレーションにより、ラジアル偏光シード・FEL を実現しうる1つの構成案ができた。引き続き、更に効率の良い方法が無いか、他の構成案の検討を続ける。そして、効率よくシードが行える方法を決定する。並行して進めているラジアル偏光・高次高調波の生成結果をもとにし、ラジアル偏光シード・FELの実証実験を実施するための設計・シミュレーションを行う。
また、気体を非線形媒質とした、ラジアル偏光・高次高調波の生成を行う。現状で、ラジアル偏光・基本波からラジアル偏光の高調波の発生を実験により確認できていない。今までに、ラジアル偏光・高次高調波を生成した報告は世界でもない。このラジアル偏光・高次高調波の生成が本課題の最も難しい研究課題である。高強度のレーザを集光すると、それ自身の高強度場により、多くの非線現象が起こり所望のラジアル偏光が生成されない。シミュレーションと実験の結果を合わせて評価して、問題の解析を行う。そして、ガスセル中での基本波の集光状態を最適化し、ラジアル偏光・高次高調波の生成を目指す。
申請時においては、ラジアル偏光シード・FELの実証試験をSPring-8のSCSS試験加速器で行うことを検討していた。しかしながら、SCSS試験加速器 が平成25年度5月中に停止することが決まり、使用できなくなった。他施設において、実証試験を行うことを模索する。SPring-8 サイト内には、その他、入射器を研究する施設などもあるため、それらの使用も検討し、本研究の実行を行う。
実証試験のために、キー項目であるラジアル偏光・高次高調波の生成を最優先で行う。

次年度の研究費の使用計画

平成25年度は、ラジアル偏光・基本波の立ち上げを、保有の物品を有効に活用することで想定よりも安価に研究が進められ、研究費の繰越金が発生した。また、24年度は本務業務の都合により、想定をした旅費を執行することができなかった。本繰越金は、現在直面しているラジアル偏光・高次高調波が実現できない問題解決のために使用する。まだ、この問題の原因はわかっていない。想定される全ての要因に対処できるように、実験素子の購入を行う。また、共同実施機関である理化学研究所・和光との打ち合わせ・共同実験のために使用する。
同様に、平成25年度の研究費もシード光源であるラジアル偏光・高次高調波の生成実験のために、主に使用する。高次高調波を生成する基本波の整形のための光学素子類を購入し、余分な非線形効果の発生を抑制する。また、ラジアル偏光・高次高調波の生成結果をもとラジアル偏光シード・FELの実証シミュレーションを行う。これに基づき、実証試験に必要な部材の購入を行う。具体的には、シード光源の集光光学系を購入する。他にも、ラジアル偏光・高次高調波、シード・FELの検証のために、シミュレーションを行う計算機の購入を行う。そして、ラジアル偏光・高次高調波の検証を確実に行うために、本検証研究は、SPring-8サイト、理化学研究所・和光の2箇所で並行して実施しており、円滑な共同研究を進めるための旅費に使用する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2012

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] EO-SAMPLING-BASED TEMPORAL OVERLAP CONTROL SYSTEM FOR AN HH SEEDED FEL2012

    • 著者名/発表者名
      Shinichi Matsubara
    • 学会等名
      IBIC 2012
    • 発表場所
      Tsukuba international congress center (茨木県)
    • 年月日
      20121001-20121004

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公開日: 2014-07-24  

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