前年度までに得られた知見から提起される,研究の全体構想に沿う基本的な課題として,探索機能に焦点を合わせた実験的解析のあり方について再考した.局所探索法の工夫を施す対象を,評価関数,近傍関数,および移動ルールに分類し,対象とその運用条件,さらには機能条件(集中化と多様化の配分条件)の最適化を意図した解析の枠組みを構築した.各々一パラメータ化された三つの方法 - 探索空間平滑化,可変近傍,およびメトロポリス法 - を用いた(一般化された)グラフ分割問題の求解,(後者の提案時には対照をなしていた)アニーリング法(SA)と Extremal Optimization 法による巡回セールスマン問題(TSP)の求解を対象に,それぞれについて比較分析を行い,探索特性間に相似性が認められることなどを明らかにした.これらは,各技法の合理的な運用や適正な比較評価,また技法群の包括的理解に資するものである.なお,当初計画では,(上述の枠組みとは無関係に,)遺伝的アルゴリズム(GA)およびタブー探索法(TS)によるTSPの求解を対象とした検討を予定していたが,上記の考察は,手続き上の自由度が大きいこれらの技法の諸特性を整理,吟味していく上で,先行実施が望ましいと判断されるものであり,この変更は,基盤形成を図る研究目的から逸脱するものではない. このほか,SAに対し,その探索機能に対する理解の適正化をふまえ,いわゆる温度長さにかかる経験則の説明づけや,分割問題への適用において,評価関数と近傍関数がつくる景観の変化に着目した改善を行った.研究期間中に行われた可視化手法にかかる検討,SA,GA,およびTSの包括的理解に向けた予備的検討,加えて探索機能に注目した既存技法の再検討の各結果とあわせ,研究目的に沿った一定の成果を得つつ,機能の観点から最適化の機序を解明するアプローチの有効性を検証した.
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