研究代表者は昨年度開発したIEEE754形式に準拠した多倍長演算ライブラリを活用して下記の項目に取り組んだ. 『①新型FMA(高速多重極アルゴリズム)をベースとした高性能放射波動場計算ソフトウェアの開発』:研究代表者が発想した新型FMAの実現可能性を検証するため,3次元スカラー放射波動場問題を例にプログラム実装を行った.その結果,3次元空間において波源と観測点の位置に非常に限定された規則性がある場合にのみ高精度計算が実現でき,汎用性が極めて乏しい結果となった.この原因を探るべき定式化から再検証を行っているが研究期間終了までには解明に至らなかった. 『②Gauss-Laguerre の数値積分公式の数値的誤差評価』:①で述べた検証に時間を要すことから,これと並行して昨年度の実績であるGauss-Laguerreの数値積分公式の分点および重みを用いて同公式の数値的誤差評価を行った.ただし,多倍長ライブラリの演算速度は極めて遅いため従来の倍精度型に変換して誤差評価を行った.結果として,4倍以上の精度で得られた分点および重みを倍精度に変換して利用すれば,実用的な演算時間で十分良好な計算結果を得ることが確認された.また,Gauss-Laguerreの数値積分公式の理論的な誤差評価式と定性的に一致した. 『③Gauss-Hermite の数値積分公式の分点の高精度計算』:①および②と並行して,Gauss-Laguerreの数値積分公式と同様に分点計算が非常に困難とされるGauss-Hermiteの数値積分公式に対しても分点の高精度計算を実施した.結果として,200次までの公式に対して高精度な分点を得ることができた.
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