研究課題/領域番号 |
24656075
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研究機関 | 気象庁気象研究所 |
研究代表者 |
関山 剛 気象庁気象研究所, 環境・応用気象研究部, 主任研究官 (90354498)
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研究分担者 |
田中 泰宙 気象庁気象研究所, 環境・応用気象研究部, 主任研究官 (50435591)
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キーワード | OSSE / データ同化 / エアロゾル / 衛星観測 / ライダー / モデルシミュレーション / 事前評価 |
研究概要 |
本研究では観測システムシミュレーション実験(OSSE)と呼ばれる仮想世界(=計算機の中に構築された世界)でのデータ同化実験を行うことによって、打ち上げ予定のエアロゾル観測衛星(特にJAXAが計画中のEarthCARE)について、その観測から得られるであろう情報の有用性を定量的に評価し、その観測衛星のインパクトを事前に明らかにすることを目標としている。 本研究計画の2年目であるH25年度は、OSSEの実行に必要な仮想観測値の作成を試みた。仮想的な地球を構築するためのエアロゾルシミュレーションモデルは既存のMASINGARを用い、仮想的なライダー観測をシミュレーションするプログラムはH24年度に開発したNASA/CALIPSO衛星用の観測シミュレータを活用した。さらに、EarthCAREの仮想観測値を作成するためにはEarthCAREの投入予定軌道を計算する必要であるが、それに関しては本研究課題の研究代表者がJAXAと気象庁気象研究所との共同研究契約に参加することによって情報提供を受けた。これらを組み合わせてEarthCAREの仮想観測値を作成することが可能であることを確認し、様々な実験条件下でのデータセット作成を開始した。 エアロゾルシミュレーションモデルMASINGARは気象庁気象研究所で開発が行われ、現在は気象庁の現業モデルとしても利用されている。その性能の良し悪しはOSSEの成功を左右する要因の一つであり、本研究計画でもMASINGARの性能向上が期待されている。H25年度はMASINGARの硫酸エアロゾル再現精度の向上と検証を行い、人為起源と自然起源の硫酸エアロゾルの比率について学会発表も多数行った。硫酸エアロゾルは大気汚染物質PM2.5の主成分であり、エアロゾル観測衛星の重要な観測ターゲットであるため、このモデル精度向上は我々のOSSEに大きく資するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画の遂行には観測システムシミュレーション実験(OSSE)が必須である。OSSEの実行には仮想観測値(モデルシミュレーションによって作られる人工的なデータ)が必要であるが、その作成には仮想的な地球を再現するモデルシミュレーション、仮想的な観測値を計算する観測シミュレータプログラム、そして打ち上げ予定の人工衛星(およびそこに搭載される測器)に関する情報が必要である。すでに3年計画の2年目であるH25年度までに高性能シミュレーションモデルおよびEarthCAREライダー観測のシミュレータを作成し、JAXAからはEarthCAREの衛星軌道情報を入手した。そしてそられをもとに仮想観測値を作成し始めており、最終年度である次年度でOSSEの計算を行う準備が整っている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である次年度は研究計画のとおりOSSEの計算を行い、その結果をもとに衛星観測(EarthCAREライダー情報)の有用性に関する事前評価を行う。残念ながら現実のEarthCAREは打ち上げが延期され(おそらく2016年に打ち上げ予定)、本研究課題の終了日までに実際の観測結果を用いた検証を行うことはできないが、本研究の成果は論文にまとめることによって将来的な検証を待つことになる。
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次年度の研究費の使用計画 |
国際学会への出席を予定して海外出張旅費を2件計上していたが、それらを中止した。そのため次年度への繰越金が発生した。 H25年度に参加を中止した国際学会と同程度の参加人数および研究レベルの国際学会に出席し、研究成果を発表する計画を立てている。そのための旅費として使用する。
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