研究課題/領域番号 |
24656077
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
三浦 英生 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90361112)
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研究分担者 |
鈴木 研 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40396461)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 構造・機能材料 / マイクロ・ナノデバイス / 電気・電子材料 / 電子デバイス・機器 / 電子顕微鏡 |
研究概要 |
従来多結晶材料の結晶品質評価は主に結晶粒径,結晶の配向性で論じられ,結晶粒界の性状は隣接した結晶の結晶方位差でのみ評価されてきた.しかし,これらの評価指標では,同一の組成でも結晶粒径変化等では説明できないナノスケールの高機能材料物性の多様性(特性の分布広がり)は説明できず,バルク特性では発現しない脆性的な破壊挙動の発現メカニズムを解明することができなかった.本提案手法は,材料の結晶構造を,共に体積を有する結晶と結晶粒界からなる複合材料として捉えるという革新的なものであり,結晶と結晶粒界の様々な物性を分離評価することで,材料物性の支配因子解明に資する重要なナノスケールでの材料評価学術基盤を構築するものである.さらに本手法はバルク材料の結晶粒界品質評価や異種材料界面近傍の結晶品質評価など極めて汎用性の高い材料評価技術として展開できる可能性が期待できるものである. 本研究においては,電子線後方散乱回折(EBSD: Electron Back-Scattering Diffraction)を応用し,電子ビーム径を50 nm以下に集束して走査し,局所的に得られる菊池線模様の信号品質を定量的に評価し,結晶品質の二次元分布を定量的に可視化する手法を開発した.特に定量的な結晶粒界品質評価を可能とする2種類の評価パラメータとして,1)視野内で観察された菊池線の鮮明度(強度)の平均値を意味するIQ( Image Quality)値と,2)視野内の結晶数評価により結晶粒界の存在位置を特定するCI(Confidence Index)値を使用し,電気・機械特性も並行して評価可能な次世代薄膜配線用めっき銅薄膜を対象として,各種めっき条件とその後の熱処理条件を変化させ,結晶粒界品質と各種電気・機械特性の相関性を評価し,提案手法の有効性を実証した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画予定であった,次世代薄膜配線材料の初期品質あるいは実使用環境における劣化損傷を結晶粒界品質という新たな視点で定量的に評価できる見通しを得,成果発表した国際学会で最優秀論文賞(2013.4.10),優秀学生論文賞2件(2012.11.27, 2012.12.15)をそれぞれ受賞するなど,研究成果は国際的にも高く評価された.さらに,提案手法の汎用性として一部耐熱合金の高温劣化損傷の進行過程の可視化の可能性も示すことができた.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は,結晶粒界品質制御に基づき,高信頼次世代薄膜配線材料システムの提案研究を予定通り推進する.特に異種材料界面の格子不整合に起因した異方的原子拡散挙動の制御という観点から,結晶粒界品質の向上を実現する.また,耐熱合金等各種材料への適用可能性につき評価を進め,平成16-18年度に採択された基盤研究(A) で開発したナノスケールでの強度ゆらぎマップ測定システムも活用し,提案手法の汎用性の実証研究も予定通り推進する.
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次年度の研究費の使用計画 |
繰り越し金額(14,040円)の内,12,840円は3月の学会参加費等で執行済み,4月支払い予定であり,H25年度への繰越金額は1,200円である.この繰り越し金は実験消耗品として使用予定である.その他平成25年度の交付金は当初予定通りに使用予定である.
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