これまで研究・開発してきた軟材料の変形特性を球圧子押込み試験により測る技術を基礎として,ヒト軟組織の内部情報,特に力学的な構造分布を計測できる理論およびシステムを研究・開発する.特に, 1方向の押込みだけで評価する従来の試験方法に関して,まず力覚センサーおよび試験装置について3方向の評価が可能なものに改め,3次元試験ができる理論およびシステムを研究・開発する. まず初年度は,研究ベースとなる汎用デスクトップ型ロボットを導入した上で,これにより計測用プローブ(圧子)を自在に移動させられる制御システム(プログラム)を開発した.導入したロボットは,プログラムによる制御性とハードウェアについての拡張性とを兼ね備えたタイプを選定した.この取り組みの結果,導入したデロボットを自在に操れる制御システムを開発した.特に,制御用PC上で動作させるソフトウェアについて,操作者の意のままにロボットを動かせるGUIを有する機能を備えたシステムを実現した.また,計測システムの開発・検証過程で用いる目的で,3次元形状を有するファントム(模擬生体試料)も作成し始めた. さらに,この押込み試験を水平方向に移動させながら実施した結果から,深さ方向の分布を同定することを試みた.この試みの結果,これまで本研究申請者が研究・開発してきた押込み試験による技術のみでは,試料内部の構造分布,とくに底面の形状によって同定した深さ分布に誤差が生じることが明らかとなった.この対策としては,内部構造について連続性を考慮して補間することによって,誤差を大幅に軽減できることを明らかとした.また併せて,ここで開発したシステムを用いながら,まず基本的な特性を調べる目的で,人工的な組織試料を対象として押込み試験を実施した.この結果,押込み速度の違いによって明確となる変形挙動によって,その試料の粘弾性特性を同定する分析技術も確立した.
|