研究課題/領域番号 |
24656083
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
鈴木 賢治 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (30154537)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 放射光X線 / 内部応力測定 / スパイラルスリット / 回折斑点追跡法 / 溶接残留応力 / PILATUS |
研究概要 |
回転スリットのスリット角度を回折角度2θと平行になるように改良した.その改良により,回折角度にかかわらず ゲージ体積を一定にすることができた.回折角に係わらず精度のよい回折角度の測定が実現できた.改良型回転スリットを精密に調整し,5軸ステージに組み上げて実験可能にした.これに,メガトルクモータを利用した試料揺動台を製作し揺動を組合せ,測定装置を製作した.試験片としてMg合金試験片を用意し,試験片の曲げ応力分布を測定し,改良型回転スリットの性能および2次元検出器の角度分解能を検査した. その結果,粗大粒試験片の負荷曲げ応力分布と回折斑点追跡法で測定した応力分布が一致し,本手法の精度・信頼性が確認できた.さらに,本手法と測定装置を組合せ,改良型回転スリットおよび回折スポット追跡法を完成させ,Mg合金溶接部の残留応力を測定した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従来のひずみスキャニング法は,粗大粒,集合組織および溶接部などに適用できないために,これらの材料は測 定困難材とされきた.その原因は,回折環が理想的な連続環ではなく,スポット状の回折となることにある.X線応力測定の分野において,これらはX線応力測定が困難な材料とされ,未解決なままとされている.この問題 を解決するために本研究では,回転スリットシステム,計数型2次元検出器を利用した回折スポット追跡法の 二つを組み合わせ,測定困難材の内部応力測定法に挑戦した.測定困難材の内部応力測定の壁を克服することができ,本研究の目的を概ね達成することができた.
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今後の研究の推進方策 |
2次元検出器PILATUSの優れた特性を用いて回折斑点追跡法による測定困難材の内部応力分布を得ることに成功した.しかし,PILATUSはX線エネルギー30keVを超えると急激に検出効率が低下する問題があった.それを避けるため30keV以下のX線エネルギーを利用して内部測定な可能なAl合金,Mg合金などの軽金属を対象に研究を展開した. 今後の研究としては,より高エネルギーX線の利用により鉄鋼材料,ニッケル基合金などの溶接部,粗大粒材を測定可能にすることを目標とする.そのために,PILATUS検出器をCCD検出器に換え,70keV相当の高エネルギー放射光を利用した回折斑点追跡法を実施する.CCD検出器の特性と回折斑点追跡法の適切な手法を明らかにすれば,ほぼ実用構造材の内部応力マップ作成の新技術が完成したといえる.
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次年度の研究費の使用計画 |
放射光実験のために,放射光使用量および実験旅費,謝金を計上する.また,粗大粒の応力を評価するための研究室X線解析として,IPおよび実験装置ジグを製作するための資材を購入する.そのほか,溶接材の製作などの関係資材を購入する. また,溶接材の応力測定結果と数値シミュレーションを比較するために,計算サーバーを購入して有限要素解析を行う. その他,残留応力測定の研究調査および成果発表を学会で発表を行う.国際会議としては,MECASENS-7(オーストラリア,シドニーにて9月開催予定)で発表する.
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