研究概要 |
外力によりFRPの層間に微細き裂が発生し破壊が開始する報告が多くなされている. 安全性と信頼性を高めるために, FRPだけでなく, 構造材料の自己診断性・自己修復性が近年重要視されている. 本研究は,人間の傷を自己的に治す仕組みを模倣して, 毛細血管のように修復材を連続的に供給するシステムを提案する. き裂検知システムでの光ファイバを併用し, 修復材の硬化を起動する機能を付加し, 長時間運用可能な自己修復FRPを目指す. 動物の毛細血管を模倣して, FRPの強度をできるだけ低下しないようにFRPの中に樹脂供給通路の作製が成功した. き裂検知用の可視光だけでなく, UV光も伝送できるプラスチック光ファイバを利用して光ファイバのコア径やグランド径などによるUV光減衰率への影響(UVLED発光強度も)やUV硬化エポキシ樹脂の硬化条件や硬化範囲と効果などを調べて, 光ファイバで伝播したUV光を利用して, UV樹脂を硬化させることが可能であることは明らかした. 本研究ではFRPに埋め込んだ光ファイバがき裂の検知と硬化修復の両方に使用することが特徴の一つで, 可視光LED光源とUVLED光源および光路切り替え装置が必要である. そこで, これからの自己修復システムの普及と広範囲な応用を踏まえて, パソコンの制御信号でき裂計測用の光路からUV照射用の光路に自動に切り替える装置を試作した. 試作されたユニットを自己修復システムに取り入れ, 制御コントローラにより自動に運行できるようになった. 試作した自己修復機能をもつFRPに対してJIS規格のDCB試験法を参考にして, FRP層間き裂を発生させ,微細チューブを通じて, UV硬化樹脂をき裂部に注入する. き裂部に硬化用のUV光を自動的に送りこみ, き裂修復が試みた. 実験の結果, 修復可能ことが確認された.
|
今後の研究の推進方策 |
静荷重によるき裂の発生を行い,自己修復を試みる.修復後の破壊靭性を測定し,き裂修復率として修復程度を評価する.また,その修復率への影響要素を検討し,完全修復を目指する. FRP構造にワンチップ着きの自己修復システムを組み入れ,自動制御動作を確認し,その実用性を確認し,修復システムを完成させる. 自己修復システムを持つFRP構造では,修復用の付加部品の影響で, その力学特性低下が予測されているが, 引張り曲げ試験でその力学特性を評価し, 修復用の付加部品による力学特性の低下の最小限化を試みる.
|