研究課題/領域番号 |
24656086
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
宮崎 則幸 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10166150)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 複屈折 / 残留応力 / クリープ変形 / 有限要素法 |
研究概要 |
本研究では、単結晶育成から素子形成までの全プロセスにおける複屈折現象を定量的に評価するための解析システム(半導体リソグラフィー用光学素子評価システム)を構築することを研究目的する。当該研究年度には単結晶の複屈折現象を引き起こす単結晶中の残留応力を評価するサブシステムの構築を主に行った。解析対象は、半導体リソグラフィー装置の光学素子として用いられるフッ化カルシウム単結晶とした。残留応力は単結晶引き上げ中あるいは単結晶インゴットアニール中の高温状態で単結晶中に生じるクリープ変形により生じる。そのため、本科学研究費補助金受け入れ以前に実施したひずみ速度一定条件下で行った高温圧縮試験結果を用いて、定常クリープ構成式の定式化を行った。フッ化カルシウム単結晶の場合は高温状態で多数のすべり系が同時に活動することが知られているので、残留応力サブシステムにおいては結晶塑性理論をベースとした結晶異方性を考慮したクリープ変形解析を行う必要はなく、等方性を仮定したクリープ解析で十分である。ただし、単結晶が有する弾性係数の異方性を考慮する必要があるため、単結晶の形状が軸対称であっても三次元解析が必要である。このような考え方のもとに、残留応力評価サブシステムを新たに開発した。このサブシステムと既に開発済の複屈折評価サブシステムを組み合わせ解析により、実際のインゴットアニール後の複屈折の測定結果と比較して、解析結果の妥当性を検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
半導体リソグラフィー用光学素子評価システムの構築に当たって最も問題となるのは、単結晶育成過程、インゴットアニール過程等の各プロセス中で単結晶体中に生じている残留応力をいかにに見積もるかである。この点に関しては過去の研究では、応力フリー温度を仮定して残留応力を算出することがもっぱら行われてきたが、これでは物理的に意味のある普遍的な応力フリー温度を見いだすことができないという重大な欠陥あった。当該年度の研究成果により、単結晶体のクリープ構成式を用いた非線形解析により残留応力を評価することが可能になったことは大きな研究の進展であり、本研究課題の大きな山を越えたと自己評価している。
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今後の研究の推進方策 |
残された課題は、半導体リソグラフィーシステム中に光学素子としてフッ化カルシウム単結晶を使用したときの複屈折評価である。平成25年度にはこのような解析を行うことを考えている。具体的には、光学素子として用いるときには残留応力に加えて、装置への取り付けによる機械的応力、高エネルギーレーザー光照射による発熱等を考慮する必要がある。また最近の半導体リソグラフィーではArFエキシマレーザーのような短波長レーザー光が用いられるが、このような場合にはフッ化カルシウムでも真性複屈折が問題となる。上記のような現象を考慮した解析システムのバージョンアップが必要となる。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費の使途の主なものは、プログラム開発に伴う、計算機用消耗品費(ソフト、記憶媒体等)、研究発表のための経費(旅費、会議登録料、論文投稿料等)、および複屈折測定実験に必要な消耗品費である。
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