平成26年度は,集束イオンビーム(FIB)で加工された破面の微小領域のECCI法とEBSD法とを組み合わせた微視的構造解析,EBSD時のキクチ線解析による転位構造の可視化などを実施した. 銅などの延性材料では,繰返し変形を受けると転位が自己組織化する.そのため,疲労き裂が伝ぱする際には破面近傍に,転位組織が存在するはずである.我々は,短時間で複数箇所の平面加工ができるFIB装置に注目した.本課題では特に,応力拡大係数幅ΔKI値とEBSD法により得られる格子回転との関係に着目した.あらかじめ繰返し硬化させた薄板状銅多結晶をCCT試験片に成形し,疲労き裂伝ぱ試験を行った.その後,ΔKI値の異なる破面の複数箇所の微小領域に対しFIB加工を施した.加工面のEBSD解析の逆極点図マップからは,ΔKI値が大きな破面では,結晶方位が徐々に変化することが分かった.さらに結晶方位に関する定量的なデータ解析からは,低ΔKI値領域では格子回転がほとんどなかった.それに対し,高ΔKI値では大きな回転がみられその大きさや深さに対する勾配はΔKI値の増加につれて増加する傾向が確認できた.よって,破面近傍の格子回転からΔKI値を推定できる可能性があることが分かった. また本課題では,EBSD法で得られるキクチ図形を利用して,疲労変形によって生じた転位構造の可視化を試みた.Kikuchi図形をHough変換し,格子の歪みを評価した.試料には定塑性ひずみ振幅条件で繰返し変形を与えた単一すべり方位の銅単結晶を用いた.Hough変換画像内の任意の斑点の半径方向のピーク位置の分布ではベイン転位構造のようなパターンが見られ,転位まわりの格子のゆがみに起因する情報が反映されたと考えられ,EBSD法でも転位構造が可視化できる可能性がある.
|