研究課題/領域番号 |
24656101
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
有馬 健太 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10324807)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | シリコンカーバイド / グラフェン / エピタキシャル成長 / 平坦化 / 表面 |
研究概要 |
数原子層以内の厚さを有する炭素(C)原子から成るグラフェンは、比類の無い優れた電気的性質を持つため、世界が注目している。シリコンカーバイド(SiC)表面を加熱する熱分解法は、グラフェンを得る有力な手法である。しかし、SiC表面のラフネス制御とシリコン(Si)原子の熱的な脱離には、最大1500℃の高温熱処理が必須であるとされている。一方で、高温の熱処理を行うとSiC表面に大きい段差のステップ端(バンチングステップ)が形成されることが分かっている。この上を覆うように形成されるグラフェンには、高密度で構造欠陥が導入され、電気的性質に悪影響を与えることが広く知られている。これらを解決し、グラフェンが本来有する優れた電気特性を発現させるためには、1000℃を遥かに超えるような高温プロセスに頼らないグラフェンの形成方法を開発する必要がある。 グラフェン形成の低温化には、(1)原子レベルで制御されたSiC平坦表面の創成、及び、(2)熱エネルギーに頼らない最表面Si単原子層の除去技術 の二つを実現する必要がある。既に、液相中での独自の手法により、原子レベルで平坦なSiC表面をウェハスケールの大面積で実現することに成功しており、今年度は上記の(2)に関する実験を行った。具体的には、希ガスにより希釈した酸素ガス中でプラズマを形成し、SiC表面を室温で少量酸化したところ、シリコン酸化物/SiC界面にモノレイヤオーダーの炭素原子が偏析する現象を見出した。これは、SiCに通常の熱酸化膜を形成した場合には見られない特異な現象であり、極めて興味深い。さらに、シリコン酸化物を湿式処理により除去し、炭素リッチとなった表面を加熱することにより、未処理のSiC表面よりも高品質のグラフェンが形成されることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、原子レベルで制御された独自の超平坦SiC表面を基板に用い、かつSiC表面上に希ガスや水素、酸素等から成る大気圧プラズマを形成することにより、1500℃程度の高温を必要とする従来よりも遥かに低温での加熱条件下で、高品質のグラフェンを形成することである。 今年度は、超平坦SiC表面を用いたグラフェン形成を開始すると共に、SiC表面を大気圧プラズマに曝す実験系を整備した。そして、あるプラズマ照射条件下で、SiC表面近傍のC原子が特異な挙動を呈することを初めて見出した。これらは、本研究が目的とする低温での加熱条件下における高品質グラフェンの形成に繋がる重要な知見である。また得られた成果を国際会議や国内学会により発表し、成果を広く公表した。 以上により、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、当該年度に着手した実験をさらに進め、プラズマによるSiC表面の室温酸化プロセスのメカニズム解明や、SiC表面上に形成したカーボンを利用したグラフェン化、さらには得られたグラフェンの原子レベル評価を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
SiC表面に大気圧プラズマを照射する実験に関して、学内の別装置から部品・部材を集めて再利用することができた。そのため、当初予想よりも低価格で実験を遂行することが可能となり、未使用額が発生した。次年度は、グラフェン化を行うための熱処理炉の高性能化や、プラズマ照射システムの高機能化に研究費を使用する予定である。
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