研究課題/領域番号 |
24656102
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
道畑 正岐 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70588855)
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研究分担者 |
高谷 裕浩 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70243178)
林 照剛 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00334011)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | WGM / マイクロプローブ / 真球度 / テーパファイバ |
研究概要 |
本研究課題では、高精度座標計測システムに用いるマイクロプローブの接触子(スタイラス)を校正することを目的としている。そのプローブは直径100マイクロメートル以下の球形をしているが、その形状および直径を高精度に計測することが困難である。つまり、それが計測不確かさを低減するボトルネックとなっている。そこで、本研究ではWhispering gallery modeと呼ばれる伝搬モードを球内で発生させ、そのモードが発生する時の条件を測定することで、マイクロ球の形状を直径の計測を実行するものである。 本年度は、基礎原理の確立に向け、以下のように2つの成果を得た。まず、WGMを高効率に発生させるシステムの構築を行った。WGMを球内で発生させるために球に光を結合させる必要がある。本研究では、光ファイバを熱延したテーパファイバを用いた。テーパファイバではファイバの周囲に光が漏れだすため、その漏れた光を用いることで高効率に球に光を導入可能であった。これによってWGMを確認したところ5回測定で0.04nmの再現性を得た。 次に、発生させたWGMを用いて球の形状を計測する原理について、マクスウェルの方程式と光の結合理論を用いて検討した。WGMでは同時に多数のモードが発生するマルチモードとなる。この場合、観測するモードがどのモードであるのかを判定する必要がある。上記の計算によって、観測したい“Fundamental mode”は上の実験装置の条件において最も結合効率が高いため、複数のモードを測定し、最も強く光り結合が起きているモードを選択すればよいということが分かった。実際に実験によって得られた結果から、球の直径を計測し結果、直径を計測することが可能であった。しかしながら、他の測定器では数nmの精度でマイクロ球を計測することが困難であるため、その正確さについての検討を行うことが困難であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の計画は、[i] WGM 発生系の最適化設計、[ii] WGM 共振の計測システムの構築・検証、としていたがおおむね達成出来ている。 「[i] WGM 発生系の最適化設計」に関して、マイクロ球に光を導入する際に、マイクロ球のサイズによって用いる光ファイバの最適な径が決定される。マイクロ球内の光の電場と光ファイバの電場を高効率に結合するために、光の位相整合条件を整える必要がある。本年度の研究では、光ファイバの径を変更することが困難であったため、マイクロ球のサイズを光ファイバに合わせたところ、高効率な結合が可能であり、ファイバ径の調整の有用性を実証することができ、ファイバ径を上手く合わせることで効率的なWGM発生システムを構築可能であることがわかった。 「[ii] WGM 共振の計測システムの構築・検証」に関して、テーパファイバとマイクロ球の位置調整を行い、効率的にWGMを発生させるシステムを構築した。テーパファイバとマイクロ球の位置関係はCCDカメラでモニタリングし、その位置調整はピエゾステージを用いて制御する。このシステムを用いてマイクロ球の様々な赤道円周上のWGM共振の信号を取得することができ、球の直径および真球度を評価可能なシステムの構築を行うことができた。また、CCDカメラの代わりに赤外CCDを設置することで、WGMが発生を可視化することが可能であった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は以下の2点を実施する予定である。 [iii] WGM 共振波長に基づく球形状の探索シミュレータの確立。まず、初年度は効率的なWGMの発生するシステムを構築することが出来た。次に、特定の狙ったモードのみを発生させるシステムを構築することで理論に基づいた計測を行うことができる。具体的には、光を球に結合する際の光ファイバの直径、光ファイバと球の位置関係、入力する光の偏光を制御することでモードを特性することが可能である。後者の2点に関しては既に実現可能であるため、本年度はテーパ型光ファイバを作製するシステムを構築する。 上記の構築したシステムを用いてWGMの共振波長から球の形状、直径を計測可能な原理について研究を行う。球が完全な真球の場合、理論に基づくピーク位置が得られる。このピークから高精度に球の直径を同定する原理の構築を行う。次に、球の形状が真球から変化するとWGM共振波長のピーク位置がシフト(真球の時に対しては“不均一”になる)する。このピークの不均一性を用いて球形状を計測する。 [iv] マイクロ球の全周計測による提案法の検証。この様にして行った球の形状に対して検証を行う。しかしながらマイクロ球の形状をナノメートルのオーダで評価可能な測定器は存在しない。そこで、複数の方法で計測した球の形状および直径について比較計測を行うことで、その不確かさ範囲を検証する。具体的には共焦点光学系の原理を用いたレーザ顕微鏡およびレーザの焦点位置を測定する移動焦点型顕微鏡を用いて計測した結果と比較する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は、これまでに得られた研究成果をドイツのアーヘンで開催される国際シンポジウムISMTII(International symposium of measurement technology and intelligent instruments)で発表を行う。 テーパ型光ファイバを作製するために、ファイバを熱し引き延ばす。そのための偏波保存の光ファイバ(波長1550nm、ソーラボジャパン)、およびマイクロトーチとそれらの設置治具(一式)の購入を予定している。また、理論計算を行うためのクラスターPCの計算機使用料、精密工学会への論文の投稿料を予算として計上している。
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