研究課題/領域番号 |
24656103
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
安武 潔 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80166503)
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研究分担者 |
垣内 弘章 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10233660)
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キーワード | シリコン / 水素還元 / 珪砂 / 高圧力プラズマ |
研究概要 |
本研究は、高圧力水素プラズマによって生成した高密度のH原子とSiO2の反応を用いて、低純度の珪砂原料から太陽電池用SiH4ガスを直接製造するプロセスを開発することを目的とする。 ① 高圧力水素プラズマによるSiO2エッチング速度のプラズマ条件依存性を測定した。その結果、600℃で2.1 nm/minが得られ、投入電力、原料温度、およびプラズマ中H原子密度の上昇とともに増加することが分かった。H2の分解および原料温度の上昇には、ガス流量が低い方が有利であるが、生成したSiH4の分解の点では不利になることが分かった。効率的な研究の推進には、水素プラズマ中H原子密度の定量が重要となるため、本年度はH密度の定量実験を優先的に実施した。 ② 種々の処理条件におけるマイクロ波水素プラズマについて、Arを用いたアクチノメトリ、およびカロリメトリによるH密度の測定を行った。両者の測定結果(1E15 - 1E17 cm-3)には1桁以上の差があるが、プラズマ条件に対する依存性は同じであるため、高密度にH原子を発生させる条件の解明には有効である。両方法による差異は、アクチノメトリでは電子エネルギー分布関数をマックスウェル分布と仮定したこと、カロリメトリでは投入電力の測定に系統誤差があることが主たる原因と考えられる。 ③ 狭ギャップ高圧力水素プラズマの場合、プローブ法が適用できないため、内部パラメータの測定が困難であり、アクチノメトリによるH原子密度の測定に問題を生じている。これを解決するとともに、電子エネルギー分布関数を求めるため、熱流体シミュレーション結果と合わせて、新たにマイクロ波伝送系も含めた水素プラズマのシミュレーションを開始した。 H原子密度のプラズマ条件依存性の測定が可能となり、SiO2エッチングの基礎特性を解明する実験に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで不明であった高圧力狭ギャップ水素プラズマにおけるH原子について、その密度の定量的測定の目処が立った。プラズマ中のH密度は、SiO2エッチング速度に直接関係するパラメータであるため、その定量的測定が可能になれば、科学的根拠に基づくプロセス開発のための大きな武器となる。本年度は、H密度測定法の開発を優先したため、エッチング特性解明に必要な基礎実験データ取得の開始がやや遅れた。H原子密度の定量に関しては、プラズマ条件とH密度に関する新しい知見の獲得も含めて、当初の計画以上に進んでいることから、研究全体としてはおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
低純度珪砂を原料としたSiH4ガスの直接製造技術を開発するためには、高密度H原子の生成、SiO2エッチングの高速化、および砂状原料のエッチング技術の開発が重要である。高密度H原子の生成、およびエッチングの高速化については、H原子密度の定量を基礎として、プロセス条件とエッチング特性の基本的関係を明らかにすることにより高速化を図る。砂状原料のエッチング技術の開発については、狭ギャップマイクロ波プラズマによるエッチングが最も効率的であることから、低流量での砂状原料の処理条件を探索する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本技術の開発には、狭ギャップ高圧力プラズマによる高密度H原子の生成とその定量がキーポイントとなる。H25年度に、H原子密度の定量測定を行う見通しが得られたことにより、測定法開発を優先的に実施したため、当初の見込み額と執行額が異なった。 研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため、当初の見込み額と執行額は異なったが、研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。
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