研究実績の概要 |
昨年度まで,超臨界二酸化炭素処理によるイオン液体(1,3-ジメチルイミダゾリウムジメチルフォスフェート)の明確な潤滑性向上は確認できなかったが,鏡面まで研摩した摩擦材表面を用いると,摩擦係数に明らかな差が現れた.特に摩擦試験初期における差が顕著であった.これは二酸化炭素が潤滑油添加剤として摩擦初期から効果を発揮する可能性を示唆する結果と考える.また,1時間に及ぶ摩擦試験においても,未処理イオン液体では途中摩擦係数の上昇が確認されるが,超臨界二酸化炭素処理イオン液体では,安定して低い摩擦係数を示した. 上記の結果が得られた原因に二酸化炭素がどのように寄与しているのかを確認すべく,飛行時間型二次イオン質量分析計による摩擦面の表面分析を行った.昨年度までの表面が粗い摩擦材摩擦面の飛行時間型二次イオン質量分析では,イオン液体アニオンと摩擦材の鉄に由来するリン酸鉄が潤滑性の被膜として観察されるのみで,二酸化炭素由来のフラグメントを検出することができなかった.今年度は,非常に強度は低いがCO3-が二酸化炭素由来のフラグメントとして摩擦面に検出された.また,それと同じ場所から摩擦材由来のMn+が検出された.深さ分析を行ったところ,この二つのフラグメントの強度変化は非常に似通った挙動をとっており,摩擦面には炭酸マンガンの存在が示唆された. 以上,本研究により,そのメカニズムが全て解明されてはいないものの,イオン液体に吸収された二酸化炭素がイオン液他の潤滑性を向上させることを明らかにすることができた.
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