本研究の目的は、研究者の研究成果である、統制された標準的な照明条件下では有効性が検証された、明度差ディザ近似によるカラー・ユニバーサルデザイン手法で作成されたカラー・パターンについて、異なる照明条件下での変化の傾向、有効性の有無を検証することにより、照明条件にロバストなカラー・ユニバーサルデザインを実現するための基礎データを得ることである。これまでの実験では、色評価用標準光源D50下において、カラー・パターンに色覚異常シミュレーションを適用してプリントすることにより、正常色覚の被験者を模擬色覚異常者として実験を行った。一方、本研究計画においては、異なる照明条件が色覚異常に与える影響も含めた評価を行う必要があり、照明光に覚異常シミュレーションを適用することは困難であることから、照明、パターンサンプルについては色覚異常シミュレーションを適用せずそのまま用い、正常色覚者である被験者に色覚シミュレート眼鏡「バリアントールP・D個別型」(大平印刷(株))を着用してもらいP型、D型の色覚異常の見え方を模擬する方法をとった。色温度と光色の印象[照明学会、技術指針JIEG-008オフィス照明設計技術指針、2002]を参考に、色温度として暖(2800K)、中(4300K)、涼(5800K)の3水準、照度として[JIS Z 9110 照明基準総則]を参考に100lx、500lx、1000lxの3水準を設定した。標準光源D50下において、色覚以上による識別が困難な2色によるカラー・パターンに明度差ディザ近似を適用(標準光源D50下においては識別可能となる)したものを、異なる照明条件下で評価することにより、識別性の変化に関するデータを取得した。
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