研究課題/領域番号 |
24656114
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
竹村 研治郎 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (90348821)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ヒューマンインターフェース / 電気粘性流体 / 触覚呈示装置 |
研究概要 |
本研究課題では入力操作前にタッチパネル上にボタン形状や位置を呈示し,ボタン押下力をトリガとして入力を検出する新たなタッチパネルを具現化することを目的としている.このため,(1)粒子分散系ER流体によるタッチパネル上での凹凸呈示手法の確立,(2)複数の指の位置と全押下力/モーメントの検出に基づく押下力の個別検出法の確立,(3)凹凸呈示と押下力検出機能を有するタッチパネル装置の開発と誤操作率低減の検証,が課題となる.平成24年度はこのうち,(1)および(2)に取り組んで以下の成果を得た. はじめに,粒子分散系ER流体が電圧を印加することによって固液相変化する性質に着目して,平面上に突起を可逆的に生成する手法を開発した.すなわち,粒子分散系ER流体を満たすチャンバの底面に電極対を配置し,これに電圧を印加することによって電極対周辺の粒子分散系ER流体を固体化し,物理的な突起を生成する装置を開発した.なお,この装置のチャンバ上面は絶縁性のフィルムによって覆われており,フィルム上面より固体化した粒子分散系ER流体の突起に触れることができる.これによって,電圧のON/OFFのみによって平面上に突起形状を生成あるいは消滅できることを確認した. つぎに,指が平面上の任意の位置を押し込んだ際の力情報から押下位置を検出可能な装置を開発した.すなわち,押下対象の平面の四隅を板ばねで支持し,それぞれの板ばねにひずみゲージを配置することによって押下時のひずみを検出した.このとき,四隅でのひずみの値の割合から押下位置と押下力を特定する手法を開発した. 最後に,上記2つの成果を統合することによって,平面上に突起を生成し,ヒトがその位置を認識して押下する動作を測定できる装置を開発した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題では入力操作前にタッチパネル上にボタン形状や位置を呈示し,ボタン押下力をトリガとして入力を検出する新たなタッチパネルを具現化することを目的とし,(1)粒子分散系ER流体によるタッチパネル上での凹凸呈示手法の確立,(2)複数の指の位置と全押下力/モーメントの検出に基づく押下力の個別検出法の確立,(3)凹凸呈示と押下力検出機能を有するタッチパネル装置の開発と誤操作率低減の検証,を具体的な課題として設定した.当初,平成24年度は(1)粒子分散系ER流体によるタッチパネル上での凹凸呈示手法の確立,を達成することを目標とした.これに対して,(1)に加えて(2)複数の指の位置と全押下力/モーメントの検出に基づく押下力の個別検出法の確立,の一部まで成果を得ている.複数の指の押下位置と押下力の個別検出には至っていないものの,一本の指の押下位置と押下力の検出法は確立した. このように,当初の計画以上に進展している理由は,申請書に記載の通り,計画段階でデバイスの設計解の可能性を複数検討していたことが挙げられる.
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題では入力操作前にタッチパネル上にボタン形状や位置を呈示し,ボタン押下力をトリガとして入力を検出する新たなタッチパネルを具現化することを目的とし,(1)粒子分散系ER流体によるタッチパネル上での凹凸呈示手法の確立,(2)複数の指の位置と全押下力/モーメントの検出に基づく押下力の個別検出法の確立,(3)凹凸呈示と押下力検出機能を有するタッチパネル装置の開発と誤操作率低減の検証,を具体的な課題として設定した.先に述べたように,既に(1)および(2)の一部に取り組み,一定の成果を得ている.このため,平成25年度は(2)および(3)について以下のように取り組む計画である. はじめに,複数指の位置と押下力の個別検出に関する研究計画を示す.タッチパネルとの統合を目指し,指位置はタッチパネルの情報から取得する.また,それぞれの位置で指がパネルを押す力に応じてパネル全体に加わる力およびモーメントが変化するはずである.そこで,パネル全体に加わる力とモーメントを,パネル周囲に配置したひずみゲージで検出し,各指がそれぞれの位置で発生している押下力を同定する手法を開発する. つぎに,平成24年度の成果と上記の押下位置および押下力に関する研究成果を統合し,凹凸呈示と押下力検出機能を有するタッチパネル装置を開発するとともにその操作性を評価する.この際,従来の指位置検出機能のみを有するタッチパネル装置を比較対象として,誤操作率を比較することにより,開発する装置の有効性を検証する予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に使用する予定の研究費が36390円発生している.これは当初計画した研究費に対して,端数が累計された結果である.平成25年の研究費に合算して,以下のような用途に使用する予定である. 平成25年は複数指の位置と押下力の個別検出と,凹凸呈示と押下力検出機能を有するタッチパネル装置の開発を行う.このため,ER流体,装置開発のための機械材料・部品および電子部品などを購入する予定である.また,電極の製作は外部委託することも計画している.力検出のために動ひずみアンプも購入する.この他,研究成果の発表の旅費も計上している.
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