研究課題/領域番号 |
24656116
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研究機関 | 室蘭工業大学 |
研究代表者 |
河合 秀樹 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20292071)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | Taylor渦 / 固気液分離 / カオス / 混相流 / 微生物流動 / 超音波ドップラ流速計 |
研究概要 |
単純な構造で安定的な混合攪拌が期待されるテーラー渦(Taylor Vortex Flow;TVF)に着目したバイオリアクターの開発を目的として,浮遊増殖,固定増殖の両面から増殖特性を検討した.固定増殖における固定担体には,2mm角の硬質樹脂立方スポンジを用いた.またモデル植物細胞としては,血球細胞や幹細胞(未分化細胞)など細胞壁を持たない動物細胞を模擬したスピルリナと,球体単細胞による固定化特性を調べるためのクロレラを用いた. 実験の結果,細胞壁を持たない微生物(スピルリナ)を使用した浮遊細胞による高速攪拌実験でも,目下細胞の損傷は殆ど確認されなかった.ただしその算出には体外露出したクロロフィルAの吸光度による同定法を用いており,精度については引き続き検証する必要がある. 一方,固定化培養法の増殖において,気相法(Aeration法)による攪拌では固体担体間の細胞付着率(固定化率)にバラツキが確認されたものの,インペラ攪拌,TVF攪拌ともに大きなバラツキは観察されなかった.TVF撹拌については均一混合が達成されているとも考えられるが,単相流におけるインペラ撹拌の従来知見では局所せん断も強く,この状態で固定化担体を投入しても担体間の細胞付着率に大きなバラツキが生じることが当初予想されたが,そのような結果とはならなかった.本実験の固体担体数は100個程度のオーダであり,未だ少ない数であるが,今後更なる検証が必要である. 超音波による速度分布計測法(自己相関法)の開発において,空間ノイズのソフト的な除去を試みたところ,計測可能距離の拡大に大きな進展が見られた.また計測できる回転Reynold数も20,000程度まで上昇させることができたため,実用化の範疇に入ったと考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
固定化法による培養増殖では,増殖率(細胞付着率)の固定化担体間での差が大きく,バラツキが生じることが問題となっている.今回の固定化増殖実験において担体間の細胞付着率に差が大きく現れる培養法を検証したところ,予想通り細胞培養で従来よく用いられる気相法(Aeration法)撹拌ではバラツキが確認された.しかし,今回インペラ攪拌でも,大きなバラツキが発生することはなく,むしろ担体間の付着率は均一に近い状態が保たれた.TVF撹拌では均一な細胞付着率が得られた. 単相流におけるインペラ攪拌では撹拌混合があまり促進されない孤立混合領域が存在することが知られている.このため当初固定化担体を投入した実験でも細胞付着率に大きなバラツキが予想されたが予想外の結果となった.このため単相流の可視化撹拌実験(ヨウ素ハイポ法)を再度実施し,検証を試みた.その結果は,従来通りインペラブレードの近傍において撹拌混合があまり促進されない孤立混合領域が確認され,既往の知見とも一致した.また,可視化法で定義づけられた攪拌混合率と軸回転速度のキャリブレーションにおいても,TVFではきれいな線形相関が得られたが,インペラ攪拌では,その再現性に大きなバラツキが生じ,不安定な撹拌混合を呈した.単相流でのこのような不安定撹拌の結果にもかかわらず,今回固定化増殖率の実験において,インペラ撹拌でも均一性が保たれた理由について,固体担体自身が流れによる混合率を助長させる効果を持つとも考えられ,早急にそのメカニズムについて検証する必要がある.
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今後の研究の推進方策 |
現在の達成状況から,今後は固液混合効果を考慮したモデル実験が必要と考えられ,固定化担体を含んだ可視化流動実験を模索する.攪拌法には,気相法(Aeration法),インペラ攪拌法,TVF攪拌,スターラー攪拌をそれぞれ用いる.また浮遊細胞の藻体破壊率と固体化担体の増殖率を同時にモニタリングすることにより,これら攪拌法の固定化への適応性について調べる.固体担体と流体の速度差を測定できる計測法として超音波の改良を引き続き行い,Aeration法,スターラー攪拌法,TVF法における担体への応用を試みて,固定化のメカニズムを浮き彫りにする.特にTVF攪拌とAeration攪拌の流体力学的な特質の違いを調べる.また,固定化法における細胞増殖のメカニズムを解明するために,撹拌が良好で殆どの細胞が浮遊している状態での担体への付着率と,沈殿しコロニー集団を形成している場合での担体付着率の違いを調べ,今後の研究の方向について目処づけを行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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