研究課題/領域番号 |
24656123
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
黒瀬 良一 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70371622)
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研究分担者 |
小森 悟 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60127082)
高垣 直尚 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00554221)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 計測技術 / 濃度計測 / 二酸化炭素 / 地球温暖化 |
研究概要 |
地球の温暖化および異常気象の正確な予測に関連して,風波気液界面を通しての二酸化炭素移動量(フラックス)に関するモデルを構築することは極めて重要であるが,二酸化炭素フラックスの実験による正確な評価手法は確立されていない.理論的に最も厳密かつ有効な二酸化炭素フラックスの評価手法として,渦相関法があげられる.しかし,既存の国内外最高性能を有する二酸化炭素濃度測定器を用いてもその空間・時間分解能が極めて低いため,風波気液界面近傍の流れ場に渦相関法を適用できる状況にはない.本研究では,水分濃度測定分野において既に確立されている光ファイバキャビティリングダウン(CRDS)式濃度測定法を二酸化炭素濃度測定に応用することにより,高性能の二酸化炭素濃度計を開発することを目的とする. 今年度は,微小流路内における有機溶剤中の水分濃度測定を目的として開発された光ファイバCRDS分光法を世界で初めて二酸化炭素の濃度測定に応用することに成功し,また,光ファイバCRDS分光法型二酸化炭素濃度計の試作機の開発に成功した.さらに,校正用の2000ppm二酸化炭素ガスを使用して本試作機の性能評価を行った.その結果,本試作機の時間解像度は30秒,空間解像度は10立方ミリメートルであり,商用二酸化炭素濃度計(例えば,時間解像度は120秒,空間解像度は30立方ミリメートル)よりも性能面で勝ることを確認した.一方,本試作機は当初本研究課題で目標としていた性能(時間解像度は1ミリ秒,空間解像度は1立方ミリメートル)を達成できなかったこと,および濃度の測定精度がフルスケールの約10%と悪いことを確認した.以上より,本濃度計を実用化するためには,光学素子の選択や改良を通して濃度計測におけるノイズの低減をより一層行う必要があるといえる.さらに,従来用いてきた二酸化炭素フラックス計測法であるマスバランス法の改良も行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,微小流路内における有機溶剤中の水分濃度測定を目的として開発された光ファイバキャビティリングダウン分光法を世界で初めて二酸化炭素の濃度測定に応用することに成功し,また,光ファイバキャビティリングダウン分光法型二酸化炭素濃度計の試作機の開発に成功した.したがって,当初の計画通りおおむね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,光ファイバキャビティリングダウン分光法型二酸化炭素濃度計の試作機の開発に成功したものの,当初本研究課題で目標としていた性能(時間解像度は1ミリ秒,空間解像度は1立方ミリメートル)を達成できなかったこと,および濃度の測定精度がフルスケールの約10%と悪いことを確認した.そこで,次年度は濃度測定プローブの形状を変更し,二酸化炭素濃度測定精度の向上を図る.さらに,従来のマスバランス法と新規開発する濃度計の両方を同時使用した比較試験を,海洋のシミュレーション装置である風波水槽内部で実施する.
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次年度の研究費の使用計画 |
光ファイバキャビティリングダウン分光法型二酸化炭素濃度計の試作機の改良型プローブの制作設計・購入を行う.また,上述した比較試験および準備試験を行うために,二酸化炭素校正ガス,純二酸化炭素ガス,純窒素ガス,速度測定用試薬などを購入する.さらに,従来の測定法であるマスバランス法のシステムの改良を引き続き行うために,流量計,液流ポンプ,液側二酸化炭素濃度計などの購入を行う.
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