これまでの熱音響エンジンや熱音響冷凍機は、音響管の管壁上の振動境界層(せん断流れ)とその外側の等エントロピー的音響場からなる系の自励振動(線形不安定現象)を理論的な基礎とする。本研究において、これと異なる全く新しい相変化型の熱音響自励振動の理論を構築し、その応用装置の開発のための理論的および数値的な基礎研究を行う。新規性と独自性は、気液界面に接する気体の圧力の周期的振動によって、気液界面において周期的な蒸発・凝縮流れを発生させて、界面に接する音響場へ継続的なエネルギーの供給を実現するところにある。蒸発・凝縮流れによる仕事を応用に資する目的で利用するというアイデアは、熱音響デバイスだけでなく、広く流体工学全般にわたって見渡しても例がなく、十分に斬新かつ挑戦的であるといえる。本研究の実績の概要は以下のとおりである:1.Boltzmann方程式の数値解析を含む理論解析を行い、水と水蒸気からなる気液2相系に音響振動が生じた場合の気液界面での周期的な蒸発・凝縮を精密に扱うことができる理論構築を行った。2.気液2相系の静止状態に対する線形安定性解析を実行し、その安定性の特徴を明らかにした。3.熱音響デバイスとしての作動するための条件について検討した。
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