分離された肝臓実質細胞を肝臓内に注入移植し,肝臓機能の維持,回復,再生を期待する肝細胞移植は,ES細胞やiPS細胞などの幹細胞技術との親和性も高く,次世代型医療として1日も早い臨床利用が求められている.特に,臓器移植の難しい新生児においては発育への悪影響を低減し治療効果の望める肝細胞移植に対して大きな期待がある.当該年度においては,国内において臨床研究として,新生児の肝細胞移植が実施され,臨床への展開に向けた技術の高度化が求められている.しかしながら,こうした,肝細胞移植技術は,生化学的な要因のみならず流動学的な要因により複雑な影響を受けることが予測され,工学的な視点からの研究が必要不可欠である.本研究は,このような次世代型医療の確立に必要不可欠である肝細胞灌流抽出に関して,流体力学的側面から流動下における肝細胞への影響を評価するものである. 臨当該年度においては,ラットならびにブタ肝臓組織から分離された肝細胞群を対象として,(A)カテーテル内でのせん断強度を模擬したマイクロチャネルせん断負荷評価,(B)負荷時間,強度を管理して一定の剪断を負荷可能であり動的にその変形,細胞群の流動特性を評価可能なレオスコープによる回転平板せん断付加評価,(C)細胞分離工程の中で重要な細胞分離時における細胞群のサイズに着目した細胞機能評価実験を実施した.せん断負荷後の肝細胞の評価は,肝細胞取得数評価のための光学顕微鏡観察による細胞分離数・密度評価ならびにトリパンブルーによる細胞生死評価を中心に行い,細胞の機能に関してはアンモニア代謝能を光学的計測手法により評価した.これらの成果をふまえて肝細胞抽出のための最適な条件について検証した.
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