研究課題/領域番号 |
24656133
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小林 秀昭 東北大学, 流体科学研究所, 教授 (30170343)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 熱工学 / 燃焼工学 / 酸素燃焼 / 高圧燃焼 / 火炎安定限界 |
研究概要 |
本研究は,詳細メカニズムが未だ明らかにされていない高圧環境の純酸素燃焼に対し,酸素噴流により形成される拡散火炎の構造と安定機構を明らかにすること目的とする.平成24年度は,純酸素平行噴流試験燃焼器の製作と高圧下の火炎安定性試験,ならびに垂直噴流に対するレーザー可視化計測と試験燃焼器の設計製作を行った. 純酸素平行噴流燃焼実験では,流れの一様性確保と火炎の観測を容易するため,石英ガラス管を外管に用いた同軸噴流バーナを製作し,0.5 MPaまでの高圧下での流れ場の可視化実験および安定限界測定を行った.高圧燃焼実験の結果,噴流火炎の吹き飛び限界流速が大気圧下の2倍以上に達し以前の計測結果が確かめられた.噴流管下流の流れ場を粒子軌跡法により可視化した結果,大気圧下では流線に屈曲が見られる程度であったリップ極近傍において,高圧下では直径0.1mmのオーダーの微細な再循環渦が安定的に形成された.再循環渦は混合特性時間を増大させるので,分子拡散係数が低下する高圧下にあってもリップ近傍での混合が促進され,火炎基部が安定化され吹き飛び限界流速が増大したと推測された. 垂直噴流実験では,流れの可視化実験を行うためのモデル装置を設計製作した.垂直噴流場では主流境界層と噴流との干渉が重要と判断し,管断面は正方形として出口側からレーザーシート光を導入することによって,管壁の近傍まで流れの観測が可能なるようにした.0.5 MPaまでの粒子軌跡計測ならびにPIV計測の結果,高圧下では壁面境界層厚さが減少し大気圧下に比較し中心軸付近で主流速が低下することがわかった.噴流の貫通高さは概ね主流と噴流の運動量比で整理されたが,高圧下では噴流速が増大すると大気圧下に比較して貫通高さが増した.主流中心付近の流速が大気圧下に比較し小さい効果が表れた.これらの成果に基づき試験燃焼器を設計製作し年度内に完成した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度の計画である,平行噴流場における試験燃焼器の製作,大気圧下および高圧下の火炎安定化試験による火炎吹き飛び限界流速の計測,圧力の影響を考察するための噴流管リップ近傍に対するレーザーシート光を用いた流線可視化計測を全て行うことができた.高圧実験は0.5 MPaまでであったが,圧力効果についてはリップ近傍の再循環渦の影響が大きいことがわかるなど,十分な成果が得られた.もう一つに計画である垂直噴流場に関しては,壁面境界層と噴流の流れ場の可視化実験を実施することができ,流れ場に対する圧力効果の知見が得られた.この成果を元に,試験燃焼器の設計製作が完了している.以上のことから,本研究は当初の計画以上に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である平成25年度は,昨年度製作した試験燃焼器を用いて,特に純酸素垂直噴射に対する実験を重点的に行う. 火炎安定性実験では,主流速と噴流速をパラメータとして,高圧連続燃焼容器内に試験燃焼器を設置し試験を行う.壁面境界層の影響が大きいと考えられるので,平行噴流実験と異なり噴流速を一定に保ち主流速を変化させて吹き飛び限界,再付着限界を計測し,吹き飛び限界マップについて平行噴射の場合との違いを明らかにする.垂直噴射では平行噴射に比較して混合がより促進されるとともに,噴流基部に再循流が形成されて火炎安定性が高まる可能性があるので,その効果を考察する.さらに,流速条件によっては酸素噴流が外管内壁にまで到達する場合があるので,これによる外管内壁の損傷に留意した実験を行う. 噴流構造可視化計測では,昨年度の結果を踏まえ,高圧下において垂直噴射の対する噴射管出口部近傍の詳細な流れ構造,ならびに酸素噴流と燃料流の混合過程を粒子軌跡法およびPIVで観測する.特に,噴流基部付近の再循環流構造,混合を促進する渦構造に対する圧力の影響に注目した実験を行う. 火炎基部構造の可視化実験では,OH-PLIFまたはOH自発光計測によって火炎基部近傍の火炎強度を明らかにする.予混合火炎形成の特徴であるOHラジカルが広く分布した箇所を調べ,火炎安定メカニズムが火炎基部予混合化によるものであるかを調べる. 以上,二年間にわたる実験結果を総括し,純酸素平行噴射および垂直噴射に対する圧力の影響を含む火炎安定マップを完成し,酸素噴流燃焼に対する火炎安定メカニズムを明らかにするとともに,応用面から,本研究目的のひとつである,混合は促進されるが火炎基部が形成されない機器設計の指針をまとめる.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は垂直噴流に対する大気圧実験および高圧実験を重点的に実施する.燃焼器の主要部分は完成しているが,純酸素噴射位置等もパラメータとすべく改良を重ねるための経費が必要である.高圧燃焼実験では試験燃焼器における火炎観測のため石英ガラス窓は消耗品として頻繁に交換する必要があり,純酸素,燃料ガスも大量に使用する.高圧燃焼実験を行う高圧容器の大型石英ガラス窓も安全のため交換を要する.以上のように,平成25年度の研究費使用は装置改良費,消耗品,実験用ガスと共に,これまでの成果を学会発表する旅費,学会参加費が中心となる.
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