研究課題/領域番号 |
24656135
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
出口 清一 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (50283411)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 廃熱発電 / 液タービン / 創エネルギー / 熱流体力学 / 相変化 / 強制対流 |
研究概要 |
本研究では、世界的/慢性的電力不足に対するソリューション提供に向け、未利用低温廃熱からの実用的/超小型発電システムの開発を目的とした。この目的の達成に向け、低温廃熱起因の液流をドライビングフォースとする液タービン駆動発電システムを考案し、その理論FSから設計/試作/試運転を進めた。 申請時には、作動媒体として高モーメンタムを得るべく重液の水銀を選定した。簡便なEXCEL熱流体シミュレーションFSにて、水銀の自然対流により液タービン駆動に足る高モーメンタム創出は困難と得られ、高比重・低沸点媒体の相変化を利用する強制対流の利用を着想し、作動媒体として住友3M製Novec(沸点34℃・比重1.41・非水溶性)と水の二相流を選定した。液タービンの選定に難航し、結句、ダイソン社のミックスフローインペラー(タービン)を入手し、このタービンサイズに合わせ装置を設計/試作した。 結果として、先ず、Novec/水の互いに混和しない二層液媒を用いる事で、EXCELにて試算した通り強制液流を発現でき、そのモーメンタムは水銀の自然対流を大きく超える値であった。 次いで選定したタービンを4つ連結し、試作装置内に挿入・試運転したところ、外部負荷無き状況では想定通りの軸回転を得た。一方、回転軸に発電機を取り付け、更にオシロスコープによる発電量計測を試みたところ、加熱温度100℃に於いて軸回転、つまり発電不能であった。この原因として、各タービンの回転軸の僅かなズレ、タービン同士のネガティブ相互作用が考えられ、光学レベルでの同軸化と、タービン間クリアランスの延長にて改修を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
若干の遅延があり、その理由は下記の通り。 申請時に作動媒体として選定した水銀について、理論FSにて想定のモーメンタムが得られない事が判明し、媒体確定に時間を要した。 また、研究費500万円の申請に対し若干の減額が有った為、その減分を液タービン設計・試作の外注を止める事で埋め合わせた。その為、液タービンに関し、自力的設計・試作と既存液タービン流用のダブルメジャーを並行した為、確定までに相当の時間を要した。 その後、装置試作は順調に進み、試運転にまで至った。一方、外部負荷有り、加熱温度100℃に於いて軸回転が得られず、現状、発電の状況にない。これの原因は究明できており、最終年度となる平成25年度に平成24年度の遅れをカバーし、当初の予定は完遂可能である。
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今後の研究の推進方策 |
試作した液タービン発電器は、外部負荷有り、加熱温度100℃に於いて軸回転、つまり発電不能な状況にある。この原因は、4連結のタービンの回転軸の僅かなズレ、タービン同士のネガティブ相互作用と考えられ、各タービンの回転軸を光学レベルで同一とし、更に、タービン間のクリアランスを可能な限り長く取り、先ず、外部負荷有りの状況に於いて回転、つまり発電を具現する。 次いで、諸パラメーターの出力(発電量)依存性を実験的に求め、理論的アプローチとの整合も検証しつつ、最適条件の明示を目指す。 尚、パラメーターとして、次を想定する。①液タービン個数、②液タービンのクリアランス、③Novec/水割合、④加熱温度、⑤冷却条件(エントロピー排出)、⑥ドラフトチューブ形状・配置、以上。 実験と理論の両アプローチにより支配的パラメーターを明示し、これらパラメーターの相関を次元解析・統計解析など数理科学的に究明する。これらより最適化のロードマップ/ストラテジーをまとめ、実用化に向かう。
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次年度の研究費の使用計画 |
発電量の精密計測の為、購入済みデジタルオシロスコープのアップグレードが必要である。装置は完成しており、軽微変更(改修)の為の金属部材・アクリル部材に加え、作動媒体であるNovec、発表旅費、論文投稿、特許明細書作成費・出願料、報告書作成費、以上が主な研究経費である。 これらを総計し、次年度研究費の70万円(+若干の残金)にて本研究開発の遂行は十分に可能である。
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