研究課題
本研究の目的は単層カーボンナノチューブ(以下SWNT)をチャネル(流路)とした直径1-2nmレベルのナノチャネルを作製し,分子の吸脱着現象を確認することである.SWNTの生成はアルコールCVD方にて,シリコン基板上に垂直もしくは水平に配向するように生成し,電子顕微鏡観察およびラマン分光より垂直配向SWNTおよび水平配向SWNTの生成を確認した.また垂直配向SWNTに対しては”As grown”の試料と試料全体をポリマーで固めた試料を準備した.これらの試料に対してナノ秒パルスレーザーを用いて,SWNTの先端を除去しOpen-endの構造に加工することを試みた.用いた波長は532nmおよび266nmであり,266nmを用いた方が若干良質な加工を行えたが大きな違いは見られなかった.次にこれらの試料し対する水の吸脱着現象をラマン分光で観測するために,既存のラマン分光に適用出来るチャンバーを設計・製作し,実験を行った.”As grown”の試料では,水分子吸着によるラマンスペクトル強度の減少が見られた一方で,アップシフトが見られなかった.これは計測に用いるレーザー光のエネルギーによって,ラマン分光の測定途中に水分子が蒸発した可能性が考えられる.一方でレーザー加工を施した”As grown”の試料では,水分子吸着後にこれまで報告されているアップシフト値3cm-1よりはるかに大きなアップシフトが見られた.この理由として水分子が表面上だけでなくナノチャネル内に吸着された,もしくは垂直に配向されていたSWNTがレーザープロセスによってばらばらにほどけ、より多くの水分子が表面に物理吸着されたことが考えられる.
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Proceedings of the 24th International Symposium on Transport Phenomena
ページ: 760-765
J. Phys. Chem. C
巻: 117, (22) ページ: 11804-11810