研究課題/領域番号 |
24656143
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
河南 治 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20382260)
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研究分担者 |
松田 佑 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20402513)
江上 泰広 愛知工業大学, 工学部, 准教授 (80292283)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 対流 / 沸騰伝熱 / 感温塗料 |
研究概要 |
本年度は感温塗料を用いた沸騰伝熱面温度分布計測を実施すべく、強制対流沸騰実験装置の作成と、感温塗料センサの作成を実施した。まず、強制対流沸騰実験装置は、沸騰試験部を流路高さ1mm、幅10mm、長さ35mmの狭隘流路形状とし、水平流条件になるように流路を設置した。なお、沸騰伝熱面は鉛直下向きの加熱面とした。伝熱面を挟んで逆側には加熱源として高温の水(水温70-90℃)を流した。試験流体はFC-72とし、膜厚2.16μmの感温塗料膜(色素:Ru、バインダー:Clearcoat UVR、溶媒:Propanol)にて沸騰伝熱面の温度分布計測を行った。その結果、沸騰気泡箇所における伝熱面温度の上昇と気泡周り温度の低下を確認する事ができた。なお、沸騰気泡と非加熱気泡では伝熱面温度変化に有為な差異が感温塗料によって感知できることも別途確認している。三次元熱伝導解析を実施した結果、沸騰気泡下流部において高い熱伝達が観測された。これは、気泡下流部に薄液膜領域が広がっている事を意味していると推測されるが、現在考察中である。 次に、感温塗料を極低温流体での沸騰伝熱研究に適用すべく、異なる3種類のポリウレタン塗料を用いて低温用感温塗料膜を作成し、温度校正試験と塗膜の低温耐久性を調べた。その結果、従来用いられてきたAkzoNobel社のAerodur clearcoat UVRが一番色素の溶解性も良く、その結果発光強度も高く、低温での耐久性にも優れていることが分かった。また、日本にて容易に入手可能な原料から作成した感温塗料膜は、100K付近の温度感度は若干Aerodur clearcoat UVRよりも高くなったが、発光強度は低くなった。ただ、測定距離が近く発光強度があまり問題にならないような環境では膜厚を薄くすることで温度耐久性を補い、100K付近の相対的に高い温度感度を利用できることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の進捗状況を研究計画と比較すると、おおむね順調に進展しているといえる。 まず、今年度は、常温域での感温塗料による沸騰伝熱面温度計測技術の確立と、固気液三相界面近傍の熱伝達分布と固気液界面位置の関連性の解明、が研究目標である。この達成のために、①.狭隘流路沸騰二相流実験ループとテストセクションの開発、②.感温塗料作成の最適化、③.感温塗料による温度計測と伝熱面温度算出方法の確立、④.伝熱面熱流束および熱伝達率算出方法の確立と、熱伝達分布と固気液界面位置の関連性、という小項目に分けて目標達成を検証した。 項目①では、実験用ループとテストセクションを作成し、既に実験を開始、データ取得に至っている。項目②では、今年度の実験に用いる感温塗料膜が作成され、データ取得に成功している。さらに、次年度の実施予定項目である極低温域での感温塗料膜の検討も前倒しで実施されている。項目③では、項目①と②にて作成した実験装置と感温塗料膜を用いて沸騰実験を実施し、感温塗料を用いた沸騰伝熱面温度計測に成功している。項目④では、実験データを考慮した三次元熱伝導解析によって、沸騰伝熱面での熱流束分布および熱伝達率分布が導出され、気液界面との関連性を考察している。 以上のように、研究は順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、平成24年度の実験を引き続いて行うとともに、極低温域での感温塗料による沸騰伝熱面温度計測技術を確立することを目標とする。このため、①.極低温流体伝熱面急冷実験装置の開発、②.極低温沸騰実験用感温塗料の作成と最適化、③.感温塗料による温度計測、④.伝熱面熱解析の実施、を行う。 また、平成24年度の実験結果から、温度分解能の向上や、実験装置および実験方法の改良も課題としており、その検討も実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費の使用計画として、以下を考えている。 物品費:極低温沸騰実験装置開発(300千円)、極低温感温塗料膜の開発(300千円)、感温塗料温度計測実験(300千円)、平成24年度実験装置の改修(200千円)を計画している。 さらに、研究成果発表、および研究打ち合わせのための旅費として、450千円を計画している。
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