多くの先進的なロボットが提案・開発されているが,生活環境内の多様な物体を自由に操れるロボットは実現していない.人間のように器用に物体を操れるロボットハンドが存在しないことが主な理由の1つである.そこで,本研究課題では,従来から開発されてきたハンドの構造を根本的に見直し,新しい内骨格型多指ハンド構築のための基盤技術を開発した.本年度は,多指ハンドへの展開を前提とした指モジュールを開発した.本年度の成果は次の通りである. 1.感覚機能を有する人工皮膚の開発を行った.柔らかい樹脂により成形された空気袋に圧力センサを埋め込むことによって,樹脂の持つ物理的性質を利用した接触力のセンシングを行えることを実験により確認した. 2.樹脂で一体成形された,アクチュエータおよびセンサを内蔵した指モジュールの開発を行い,動作確認を行った.アクチュエータを内骨格の一部として利用することで指のモジュール化を実現した.これにより小型ロボットへの適用も可能で,将来的には,医療,福祉分野などへの展開も期待される. 3.快速造形法の一種である積層造形法を用いて,2.で設計した骨格構造に,1.で開発した人工皮膚を直接積層造形する事で「様々な部品をそれらの機能を維持しながら,樹脂と一体化する」機能統合型階層的樹脂成形法の開発を行った. 4.1.で開発した人工皮膚と2.で開発した骨格構造とを,3.で開発した樹脂成形法によって統合し,内骨格型指モジュールの構築を行った. 5.4.で開発した内骨格型指モジュールによりプロトタイプハンドの構築を行い,把持やハンドリングの制御に有効な指の構成や指先の感覚機能について考察を行った.
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