研究課題/領域番号 |
24656172
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
高尾 英邦 香川大学, 微細構造デバイス統合研究センター, 准教授 (40314091)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | マイクロ・ナノメカトロニクス / 微小気流アレイ / 触覚提示 |
研究概要 |
1.マルチジェット型ベンチュリを用いた冷覚提示機構の開発 微小領域の局所冷却において,ベンチュリ効果を用いたマイクロミスト生成機構が高い表面冷却能力を示す。高次元触感覚提示における冷覚刺激を実現する上では,様々な流速に変化する気流に対して,気化による冷却効果を一定に保つ必要性が生じてくる。そこで,揮発性(冷却効果)の異なる複数の液体を適宜混合可能なマルチジェット型ベンチュリ霧化器の開発を行い,力覚提示と独立したパラメータとして冷却効果の制御が可能な機構を新たに実現した。製作したマルチジェット型ベンチュリは,複数の流体を一つの微小流路内で良好に混合噴霧できる可能性を示した。また,複数の液体混合比を変化させることで,冷却効果を連続可変できることを実験で示した。液体混合比の連続制御機構を新規に開発することで,冷却能力を気流速と独立して制御可能な冷覚提示機構を実現した。 2.振動覚提示に向けた圧力発振器用負性抵抗バルブの開発 気流振動を用いた指先への振動覚提示機構の実現に向けて,圧力発振に応用できる微小バルブ構造の設計と試作を行った。圧力発振器の確実な実現に向けて,大変位駆動と単純な製作工程の両立が可能な新しいバルブ駆動を提案し,人間の振動覚刺激に十分な速度で追従できるマイクロバルブの形成条件と,その設計について検討を実施した。その結果,並行駆動型で十分な駆動速度を確保できるマイクロバルブの試作に成功し,良好な流量変調特性を実測によって確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り,当年度は「マルチジェット型ベンチュリを用いた冷覚提示機構の開発」と「振動覚提示に向けた圧力発振器用負性抵抗バルブの開発」に取り組んできた。当年度には揮発性(冷却効果)の異なる複数の液体を適宜混合可能なマルチジェット型ベンチュリ霧化器の開発に成功しており,計画で重要となる微小領域の局所冷却効果について,検証を完了することができた。複数の液体混合比を変化させることで,冷却効果を連続可変できることも実験で実証できた。 また,気流振動を用いた指先への振動覚提示機構の実現に向けた圧力発振器を実現すべく,大変位駆動が可能な新しいバルブの試作と評価にも成功している。このバルブ素子の性能は人間の振動覚刺激に十分な速度で追従できるものと予想され,気流による人間の振動覚刺激に利用可能な素子の実現が行えたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
当年度に実現したマルチジェット型ベンチュリを用いた冷覚提示機構と振動覚提示に向けた圧力発振器用負性抵抗バルブの技術を融合させて,高次元触感覚提示デバイスの集積化実現を推進して行く。また,電子回路の設計シミュレーション技術であるSPICEをマイクロバルブの流体回路設計に応用する技術を確立し,振動覚発生回路の設計と製作へと展開する。 高次元触感覚提示デバイスにおいては,「冷覚」「振動覚」提示要素に加えて,「温覚(ヒーター加熱)」と「力覚(流量制御)」の機能をすべて統合化した高次元の触感覚提示デバイスを実現する予定である。その設計においては,気流速の変化に伴う必要加熱量や圧力振動振幅の変化など,考慮が難しい問題も含まれているが,理論計算と実験の比較による試行錯誤を繰り返しながら,適切な能力を組み合わせた多次元の提示機構を集積化してゆく。当初のデバイスは1列ノズル,すなわち1次元アレイから実現を開始し,これをスタック(積み上げ)して2次元アレイとして実現することを目指して行く。最終的には「本物志向」の触感覚再現に向けた提示データの体系的取得を目指しながら,それぞれの独立要素が指先の感覚に与える効果,また,それぞれを独立に与えた場合と組み合わせた場合の感じ取り方の違いなど,これまでの触覚提示技術では検証が不可能であった領域の検証を実施する。各種刺激の同時提示により,これまでにない本物志向の触感覚実現に向けた提示技術の開発指針を得ることを当研究の最終目標とする。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に計画している高次元触感覚提示デバイスの評価においては,冷覚と温度覚は気流の状態と独立に制御される必要がある。よって,力覚を生成する気流の温度や湿度を一定に維持することは,高次元提示の効果を正しく判別する上で必要不可欠である。また,流体発振回路を形成するバルブ素子の正確なモデル化と検証を実施するには,供給流体の温度と湿度が常に安定化されていなくてはならない。よって,微小流量用温湿度制御装置や微差圧変換器を導入してこれらの研究を遂行して行く。 また,本研究を通じて高い研究成果が得られるものと期待されるため,これらの対外発表に必要な旅費や論文掲載費に本研究費を用いる予定である。
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