1.圧力・流体回路の設計と製作 マイクロバルブの集積化を進め,回路規模を大きくすれば、空気圧集積回路の設計技術が必要となる。また,流路をアレイ状にして複数の流体発振機を組み合わせるためには,それぞれの干渉を考慮した設計を実施する必要がある。我々は大規模回路設計に強い半導体集積回路の設計環境を空気圧力集積回路設計に活用する技術を確立した。具体的には,電圧を気圧,電流を気流として考え,バルブのリークを含めたモデルをMOSFETのSPICEモデルをベースとして構築し,SPICEをベースとする回路シミュレータ上でのバルブ動作,ならびに,複数のバルブを組み合わせた流体回路の動作検証を進めた。その結果,複数のバルブを組み合わせた回路の圧力伝達特性の解析を行うことができ,製作した回路の圧力伝達特性評価結果との高い一致を得られることが確認できた。本技術を適用し,種々の圧力生成回路実現につなげる見通しが得られた。 2.高次元触感覚提示デバイスの集積化実現 これまで開発した「冷覚」「圧力」分布の提示要素ををすべて統合化した高次元の触感覚提示デバイスを実現した。提示に適切な能力を有する提示機構を集積化し,ベンチュリアレイとノズルアレイを複数組み合わせたアレイ状デバイスの形で形成した。形成された集積化デバイスにより,各触覚要素をほぼ独立に制御した触感覚情報提示が可能となった。流量分布を連続的に変化させ,それぞれの独立要素が指先に与える力分布や独立して制御可能な空間的解像度を評価した結果,流路ピッチと同様の800ミクロンピッチでの圧力分布提示が可能であった。また,さらなる素子の微細加工化を進めて,最終的には320ミクロンまで提示間隔を精細化した。圧覚に加えて,冷覚と温覚の同時刺激を実現したことで,これまで評価されていなかった触感覚提示の評価が可能になったといえる。
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