研究課題/領域番号 |
24656174
|
研究機関 | 公立はこだて未来大学 |
研究代表者 |
櫻沢 繁 公立はこだて未来大学, システム情報科学部, 准教授 (40325890)
|
キーワード | 化学知能ロボット / 機能性高分子ゲル / BZ反応 / 走化性 |
研究概要 |
近年、機能性ゲルとBZ反応を利用して自律的に歩行する化学ロボットが盛んに研究されている。本研究では、これらの研究のプラットフォームに反応拡散系の周期的空間パターンの伝播を応用し、蠕動運動する生物を模倣した新しい化学ロボットのデザインを試みる。このロボットの特徴は、ロボット内部における空間的に非対称な情報伝播の生成と、環境との相互作用による情報伝播の自律的調整機構である。このような特徴を活かし、本研究では、環境を判断して自ら運動を変え、且つ集団で互いに相互作用しながら協同性を発揮するといった、小スケールな化学的知能ロボットの開発を目的とする。 現在までに、自励振動ゲルの形状とBZ反応の周期及び床との接地状況を適切に整合した結果、平坦な床で蠕動運動による重心移動が観察された。さらにBZ反応がセンサとしても働くことを考慮して、このゲルが蠕動運動しながら解放空間から狭く囲い込まれた閉鎖空間(コの字型の溝)に入り込んだ場合の観察を行った。その結果、反応物が消費され且つ反応生成物の拡散が滞ることで閉鎖空間の溶液条件が変化し、反応パターンの伝播方向が逆転し、移動方向が逆転した。結果として、走化性により移動し、あたかも狭い所に入り込んだ時、後ずさりして脱出するかのような知能的な振る舞いが観察された。 まず、この現象の再現性を実験によって確認した。更にメカニズムを確認するため、カメラで3方向から観察し、反応の進行と接地状況との関係を調べ、反応と運動の因果関係をモデル化した。そのモデルによって、反応拡散系のシミュレーションを行い進行方向が逆転するメカニズムを確認した。この研究については現在論文を執筆中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上述の自励振動ゲルの蠕動運動による重心移動や閉鎖空間からの脱出は早い段階で確認できたが、再現性がなかなか取れなかった。この再現性を確保するための試行錯誤が予想に反して1年以上にもわたって続いた事が遅れの原因である。この試行錯誤により、現在では膨大な新たな知見が蓄積した。
|
今後の研究の推進方策 |
今後、集まった新たな知見とともに論文の執筆を行う。また、複数のゲルの協調現象、及びマイクロゲルを作成し、自律的な会合・解離現象における集団運動などを確認する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
化学知能ロボットの集団的振る舞いを調べるために、大量のBZゲルを作成する必要があった。その試薬代として物品費を多めに見込んでいたが、計画の遅れに伴い予定していた実験ができなかった。これは次年度に行う予定であるため、次年度予算に回した。 化学知能ロボットの集団的振る舞い、またマイクロゲルによる化学知能ロボットを作成し、自律的な会合・解離現象における集団運動などを確認する。そのために試薬等の物品を購入する。
|