これまでの自励振動高分子は、NIPAAmで構成された主鎖の水溶性が高すぎるためナノファイバー化しても水中において分散してしまい、アクチュエータとして機能することが難しいことが明らかとなっていた。高分子の溶解性をコントロールするため、疎水基を主鎖に導入した新規自励振動型高分子の合成を行った。疎水基の含有量を最適化することで、ナノファイバー化した後も水中で形状を維持可能な新規ナノファイバーゲルの作製に成功した。自励振動高分子からなるナノファイバーゲルは、一般的な鋳型を用いて合成する高分子ゲルとは異なり、後加工によって多様な形状にデザイン可能なことが明らかとなった。ナノファイバーゲルは、ゲルを構成する自励振動高分子の基礎物性制御によってその駆動を制御可能である。駆動周波数を制御するため、多様な主鎖を有する自励振動高分子について温度と振動周期の関係を明らかとした。また、ナノファイバーゲルの駆動原理を明らかとするため、自励振動高分子に対する水分子の吸・脱着挙動を測定した。自励振動高分子は共有結合されているRu(bpy)3錯体部位の水和構造が周期的に変化することで自励的に高分子鎖が伸び縮みを起こす。架橋構造を有するゲルにおいては、高分子鎖の集団挙動が膨潤収縮運動として観察することができる。QCM-Dを用いることにより、BZ反応を駆動源とする自励振動高分子に対する水分子の自励的な吸脱挙動を世界で初めて明らかにすることに成功した。最終的にはナノファイバーゲルアクチュエータを、マイクロチップ内部で働くポンプやバルブ等の動力源として応用可能とするため、駆動環境のマイルド化を図る検討も行った。プロトンを放出可能な部位を自励振動高分子に内包させることにより、強酸を直接的に加えることなく自励振動が可能な新規ゲルアクチュエータを合成することに成功した。これらの知見は、国際的に著名な学会誌に採択されている。
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