研究課題/領域番号 |
24656181
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
石原 昇 東京工業大学, ソリューション研究機構, 特任教授 (20396641)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | エネルギーハーベスティング / CMOS集積回路 / 昇圧回路 / チャージポンプ / 発電木 / 環境エネルギー / 畜電池 / 葉序 |
研究概要 |
極限までの環境エネルギー利用を目的として、平成24年度は、エネルギー・ハーベスティング回路の原理確認、構成法の検討を主体に以下の3項目の課題に取り組んだ。 1.電磁波エネルギー・ハーベスティング回路:MOSダイオードと容量による多段チャージポンプ構成において、低損失化に有利なMOSダイオード接続構成を明らかにした。動作確認のため、0.18μm CMOSプロセスにより集積回路チップを試作評価した。その結果、試作した集積回路チップにより900MHzの電磁波エネルギーを、コンデンサにエネルギーを蓄えられることを実験的に確認した。 2.CMOS昇圧回路:鉛蓄電池などの2次電池にエネルギーを蓄えるためには高電圧のエネルギーに変換する必要がある。今回、低耐圧のCMOSプロセスにより高電圧エネルギーの出力を可能とする回路構成を明らかにした。トリプルウェル構造のMOSトランジスタを採用しウェル電位のバイアシングを主に工夫した。トランジスタの耐圧が10V、容量の耐圧が5VのCMOSプロセスにより回路を試作した結果、耐圧を上回る20Vの高電圧エネルギーへの変換に成功した。 3.「発電木」:光、振動、電磁波、風力、音による環境エネルギーのハーベスティングシステムの設計試作に着手した。光エネルギーをハーベスティングする太陽電池パネルを複数枚用い、配置の仕方は植物の葉序に習った。振動はスプリングでつるした磁石の振動エネルギーをコイルで電気に変換する素子を葉に該当する部分に多数ぶら下げハーベスティングする。電磁波は太陽電池までの配線をアンテナとして利用し、受信した高周波信号と低周波信号をフィルタリングし、それぞれのエネルギーをハーベスティングする構成とした。風力は発電木の先端に発電モータを設置し、音は多数の小型マイクを葉に該当する部分に配置する構成とした。現在、高さ1m程の「発電木」の試作を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年の研究期間で、初年度は昇圧回路を主体にエネルギー・ハーベスティング回路の原理確認、構成法を回路シミュレーションおよびディスクリート部品による実験評価を実施し、2年目に集積回路チップ化し、それを用いた「発電木」を試作し提案技術の有効性を実証する。具体的には、平成24年度で①環境の電磁波をクロックエネルギー源に使用する回路技術、②異種ハーベスタの集積化による相互補償構成技術の検討を行い、平成25年度で③エネルギー・ハーベスタ集積回路チップ化技術の検討、④高効率エネルギー蓄積システム「発電木」を試作する計画であった。 この当初計画に対し、平成24年度の進捗は、研究実績の概要で既に述べたように、上記①に対応する電磁波エネルギー・ハーベスティング回路とCMOS昇圧回路の技術検討をコンピュータによるシミュレーション解析やディスクリート部品による実験により実施した。③の集積回路チップ化も並行して前倒しで実施し、提案技術の有効性確認まで行った。③は次年度実施の予定であったが研究効率を考慮し先行実施を判断した。また、先行実施により集積化の課題が明らかになったので次年度フィードバックさせる予定である。②の異種ハーベスタの集積化と③の「発電木」の試作についても並行に検討した方が効率的と判断し、現在、光、振動、電磁波、風力、音の複数の環境エネルギーを同時にハーベスティングする「発電木」の設計、試作を進めながらの異種ハーベスタの集積化の検討を進めている状況である。ハーベスティングの高効率化を示す詳細データの収集はこれからが本番であるが、おおむね計画通りに進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、具体的ターゲットとして以下の2項目に着目し研究を進め、極限までの環境エネルギーの利用を可能とするエネルギー・ハーベスティングの高効率化限界を追求する。 1. エネルギー・ハーベスティング用集積回路チップ/モジュールの試作 H24年度に試作した電磁波エネルギー・ハーベスティング回路の感度は、未だ200~300mV以上が必要な状況で、感度が低く損失も大きい。サイズは大きくなるがトランスとの組み合わせ回路を検討し、回路の高感度化、高効率化を進める。集積回路レベルに留まらず、モジュール部品の活用も念頭に、より高感度なエネルギー・ハーベスティング用集積回路チップ/モジュールの構成法、設計法を追求し、改善チップ/モジュールの試作も実施する。 2. 異なる環境エネルギーのハーベスティングを可能とする「発電木」の試作、評価 試作したハーベスティング用集積回路チップやモジュールを活用し、光、振動、電磁波、風力、音を例に異なる環境エネルギーを同時にハーベスティングする提案システム「発電木」の試作、評価を繰り返し、異種ハーベスタによるシステムの構成法、各ハーベスタの制御法を理論と実験により探求し、環境エネルギーを最大限に活用できる高効率「発電木」のプロトタイプを実現する。 H25年度は上記課題について積極的に取り組み、2年間の成果を取りまとめ、高効率エネルギー・ハーベスティング技術として学会等で積極的にアピールして行く。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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