研究課題/領域番号 |
24656181
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
石原 昇 東京工業大学, ソリューション研究機構, 特任教授 (20396641)
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キーワード | エネルギー・ハーベスティング / CMOS集積回路 / 昇圧回路 / チャージポンプ / 発電木 / 環境エネルギー / 畜電池 |
研究概要 |
極限までの環境エネルギー利用を目的として、平成25年度は、高効率エネルギー・ハーベスティング回路の構成法、設計法を主体に取り組んだ。 1.高効率CMOS昇圧回路:昇圧回路として多く用いられているディクソン型チャージポンプ回路は、MOSダイオードのしきい値電圧により効率が制限される。そこで、ブートストラップ回路技術により、しきい値電圧をキャンセルする回路の構成法、設計法の検討を行った。設計は0.18μmのCMOSプロセスを想定し、鉛蓄電池への充電を目的として、15V以上の出力電圧の確保を目標とした。回路はMOSトランジスタの耐圧が低いことから、トリプルウェル構造のトランジスタを用い、ウェル電位のバイアス回路の工夫により高電圧出力を可能とした。11段構成で、ブートストラップ回路なし場合に比べ、2V高い19Vの出力電圧が得られる見通しをシミュレーションにより確認した。 2. 電磁波エネルギー・ハーベスティング回路の高効率化設計法:空間に存在する電磁波のエネルギーを効率的に蓄えるためのエネルギー・ハーベスティング回路とアンテナ間のインピーダンス変換条件を明らかにした。MOSダイオードと容量による多段チャージポンプ回路は非線形動作となることから、その入力インピーダンスは、電磁波の入力電力レベルによって大きく変化する。π型とL型のLCインピーダンス変換回路について、回路の損失と電力効率の関係をシミュレーションにより明確化した。損失は、LのQ値に律則され、チップ部品のQ値として150を想定すると、電力効率は、12%程度となってしまう。高Qのインダクタの実装が重要であることを明らかにした。 3.エネルギー・ハーべスティング用集積回路チップの試作: 回路技術の有効性を確認するため、0.18μmCMOSプロセスによる試作を行った。評価は、次年度実施予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初2年の研究期間で、初年度は昇圧回路を主体にエネルギー・ハーベスティング回路の原理確認、構成法を回路シミュレーションおよびディスクリート部品による実験評価を実施し、2年目に集積回路チップ化し、それを用いた「発電木」を試作し提案技術の有効性を実証する。具体的には、平成24年度で①環境の電磁波をクロックエネルギー源に使用する回路技術、②異種ハーベスタの集積化による相互補償構成技術の検討を行い、平成25年度で③エネルギー・ハーベスタ集積回路チップ化技術の検討、④高効率エネルギー蓄積システム「発電木」を試作する計画であった。 この当初計画に対し、平成24年度は、上記①に対応する電磁波エネルギー・ハーベスティング回路や昇圧回路をシミュレーション解析やディスクリート部品による実験により具体化するなど、おおむね順調に検討を進めることができた。その結果を受けて、平成25年度は、上記③のエネルギー・ハーベスタの集積回路チップ化技術の検討を進めたが、集積回路の詳細設計に時間を要し、試作が遅延した。そのため、その集積回路チップを用いる上記④の高効率エネルギー蓄積システム「発電木」の試作を当初計画通り完了できない状況となった。 このため、研究期間を1年延伸することを判断し、延長承認申請書を提出し承認して頂いた。次年度(平成26年度)では、試作した集積回路チップの組立評価を継続して進め、光、振動、電磁波、風力、音の複数の環境エネルギーを同時にハーベスティングする「発電木」のプロトタイプを完成させ、運用評価する計画である。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度(延長期間)は、試作したハーベスティング用集積回路チップやモジュールを活用し、光、振動、電磁波、風力、音を例に異なる環境エネルギーを同時にハーベスティングする提案システム「発電木」の試作、評価を繰り返し、異種ハーベスタによるシステムの構成法、各ハーベスタの制御法を理論と実験により探求し、環境エネルギーを最大限に活用できる高効率「発電木」のプロトタイプを実現する。 また、平成26年度は「発電木」を3年間の取りまとめ成果として、高効率エネルギー・ハーベスティング技術として学会等で積極的にアピールする。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に、昇圧回路の集積回路チップ化を行い、それを用いた「発電木」の設計試作を行う予定であったが、集積回路チップの設計に時間を要し平成25年度の計画全体が遅延したため、未使用額を生じた。 このため、「発電木」の試作評価と学会での発表を次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てる。
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