研究課題/領域番号 |
24656182
|
研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
河村 篤男 横浜国立大学, 工学研究院, 教授 (80186139)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | パワーエレクトロニクス / インバータ / スイッチングデバイス / ワイヤレス / 直流変換 / 共振型整流回路 |
研究概要 |
平成20年度から平成22年度までの電気磁気結合の原理に基づくワイヤレス電力伝送の研究の結果、20cmの距離においても99%程度の効率で高周波の電力が送れることが確認できた。しかし、このデータは高周波数(約13MHz)での送電端と受電端の電力の測定比のため、送られた電力を電気機器のエネルギー源として使うには、高周波電力を直流に変換する必要がある。しかしながら、一般に高い周波数での電力用整流器は効率が非常に低い。そこで、本研究では、高周波の電力の送電端からワイヤレス受電して、さらに直流変換までを含めた総合効率を向上するための全体システム設計の基礎研究を行う。平成24年度においては、理論構築と実証実験を行い、下記4点の研究を実施した。 (1)理論構築と共振型整流器のトポロジーとして、これまでの等価回路を用いたアプローチをベースにし、中継器および共振型整流器を含めた等価回路を提案した。また提案回路の動作をP-SPICEシミュレーションし、共振型整流器のトポロジーによる整流効率の変化を再現し、解析を行った。 (2)高周波共振整流回路の製作として、これまでに制作した電気磁気共鳴部を活かしつつ、共振型整流回路部分の製作を行った。 (3)電力伝送の理論と実験の比較検討として、まず電気磁気共鳴を用いない状態での共振整流器の動作を確認した。また、電気磁気共鳴により、ワイヤレス電力伝送を行った時点での効率測定を実施した。 (4)最適化手順の見直しとして、(1)理論構築と共振型整流器のトポロジーに基づき、効率最大化の手順を検討した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載したとおり、下記4点の内容について計画どおりに研究を実施し、当初想定した研究結果を得た。 (1)理論構築と共振型整流器のトポロジーとしては、ダイオードの逆回復電流を正確に測定し、これまでの等価回路を用いたアプローチをベースにして、共振型整流器を含めた等価回路を提案した。また、その動作を解析した。これらの研究結果は、本研究の目的である高い周波数での電力用整流器の高効率化への基盤技術となりうる。 (2)当初の目的通り、これまでに製作した電気磁気共鳴部を活かしつつ、共振型整流回路部分の製作を行った。これにより理論的なアプローチと実機ベースでのアプローチが可能となった。 (3)電力伝送の理論と実験の比較検討においても当初の予定通り、電気磁気共鳴を用いない状態で、共振整流器の動作を確認した。また、電気磁気共鳴により、ワイヤレス電力伝送を行った時点での効率測定も行った。 (4)最適化手順の見直しとして、効率最大化の手順検討を行った。 以上のように平成24年度の研究計画どおりに研究が進行しており、「(2)おおむね順調に展開している。」と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
平成25年度においては平成24年度の研究成果のもと下記3点の研究内容を実施予定である。 (1)「前年度の伝送効率の実験データの検討」:伝送効率の変化は、多くのパラメータから決まるので、どのパラメータが一番効いているかをP-SPICEおよび実験で確認する。次に、理論部分を見直して、その現象を説明できる理論を構築する。計算機での解析も実施予定である。 (2)「実験装置の再検討」:コイルの3次元的な配置、共振型整流器の回路など、いろいろと工夫できるように装置を改造する。現段階においては、どの点が一番効果があるか不明である。しかしながら、これまでの経験より共振型整流回路と電気磁気共鳴器の接続部分が相当効率に変化を与えていると思われる。そのため、接続部の検討を重点的に行う予定である。 (3)「伝送効率の最大化実験と設計手順の提案」:申請者らの実績では、電気磁気共鳴器だけで約99%の効率、共振型整流器が仮に90%の効率として、総合効率88%以上を目標とする。測定装置系はほぼ完成しているため、整流器の試作および電気磁気共鳴部の試作を繰り返し、試験をおこなう。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度においては実験装置の再検討を実施する。まず平成24年度に得られた知見をもとに、高周波化および部品の小型化によって自作が困難である共振型整流回路の外注を複数回実施し、より高精度なデータ収集を実施する予定である。また、コイルの3次元的な配置、共振型整流器の回路など、いろいろと工夫できるように装置を改造する。これらの試作・外注費として主に研究費を使用する予定である。さらに、試作・外注した実験機を用いて、実験を行う。そのため博士・修士学生各1名ずつに実験補助を依頼する予定である。 最後に平成25年度は研究最終年度であるため、本研究費で得られた知見を広く社会に還元するため国内・国際会議における研究発表、学会誌への投稿を逐次行う予定である。
|