研究課題
今日の電力系統には,高品質・高信頼化が求められている.その一方で,既存設備の高経年化による供給信頼度の低下が問題視されており,適切な運用が求められている.そこで,これらの解決策として筆者らはアセットマネジメントとスマートグリッドを包括した電力系統最適運用システム(IGMS)を提案し,その基礎・応用研究を行った.まず,これを実現するため,IGMS(Intelligent Grid Management System)を提案し,その基礎検討を行った.機器の劣化進展予測に基づく潮流制御及び機器診断に基づくリアルタイム潮流制御について検討を行い,機器劣化進展予測に基づく潮流制御及び機器診断に基づくリアルタイム潮流制御について検討を行った.得られた結果を以下のとおりである.すなわち,(1) IGMSによる機器劣化推定に基づく最適潮流制御により,機器状態を考慮しない従来の制御方法と比べ,システム全体の経済性が大きく向上することが明らかとなった.これはIGMSの主要な適用メリットである.また次に,(2) IMGSにより,系統内機器の統合的診断に基づいた詳細な信頼度評価を行い,総合コストを最も小さくする潮流制御を導出可能であることを明らかにした.続いて,IGMSによる系統全体の機器に対する最適保守戦略の立案に関する検討を行った.系統全体の機器に対する保守戦略を考慮する際に,機器の単独故障に比べ多重故障による被害が極端に大きい機器が存在しない場合,全機器の組み合わせによる膨大な計算を行うことはなく,有効な保守戦略の立案が可能であることがわかった.この結果より,大規模な系統モデルにおいても,系統全体の構成機器に対する保守戦略の立案をIGMSによって導出可能と考えられる.このように,当初より期待されていたIGMS適用の成果を得ることができた.
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IEEE Transactions on Dielectrics and Electrical Insulation
巻: Vol.20, No.6 ページ: 2195–2202