研究課題/領域番号 |
24656187
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
竹下 隆晴 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70171634)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | スマートグリッド / 無効電力補償 / 損失最小化 |
研究概要 |
電力配電系統の線路損失低減のために,電力需要家の力率改善コンデンサを用いた自動力率調整装置を導入して無効電力を零に,すなわち受電力率を1に調整している。しかしながら,自動力率調整装置が導入されている需要家の割合は50%以下であり,十分な線路損失低減ができていない。本研究では,スマートグリッド構想に適した新たな配電系統の制御法の1つとして,線路損失最小化を実現する。配電系統内各所の線路電流,電圧情報を用い,既存設備を有効利用して,配電系統の無効電流による線路損失を現状の1/10にする。平成24年度では,以下の2項目における研究成果が得られた。 1.複数補償器による複数需要家の無効電力補償法と線路損失最小化 無効電力補償装置を1台所有しているが,本提案では複数台の補償装置による複数需要家の無効電力補償を実施するために,新たに1台の無効電力補償装置を試作した。次に,複数補償器による複数需要家の線路損失最小化理論を導出した。さらに,配電系統のパラメータを用いて,複数補償器による複数需要家の補償特性と線路損失最小化特性をシミュレーションにより実施した。3 相,200V,6kVAの配電系統モデル実験装置に,試作した無効電力補償装置を用いて,無効電力補償と線路損失最小化の特性を確認し、無効電力による損失を約1/8に低減できた。 2.補償容量限界および非連続補償量による無効電力補償と線路損失低減効果 まず,補償容量限界を考慮した線路損失最小化理論を導出する。実際の配電系統へ適用するには,自動力率調整装置などの補償限界を考慮する必要があり,補償限界を持った複数補償器で複数需要家を補償する場合の線路損失最小化理論を導出した。次に,補償容量限界を考慮した線路損失最小化理論を用いて,簡単な配電系統モデルにおけるシミュレーションを実施し,無効電力補償と損失低減の特性を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画書に記した平成24年度の研究内容および研究計画について,実施できているため。
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今後の研究の推進方策 |
研究内容のうち「補償容量限界および非連続補償量による無効電力補償と線路損失低減効果」と「無効電流を低減するための補償装置の種類・配置と線路損失低減効果」を実施する。 1.補償容量限界および非連続補償量による無効電力補償と線路損失低減効果 まず,補償容量限界を考慮した線路損失最小化理論の実験検証をする。モデル配電系統を用いて前年度導出した補償容量限界を考慮した線路損失最小化理論を適用した実験をし,無効電流補償と損失低減効果を検証する。次に,非連続補償量を考慮した線路損失最小化理論を導出する。配電系統に設置されている進相コンデンサは,バンクごとのオン/オフ切り替えのため,補償量が非連続になる。非連続補償量の補償装置を含めた複数補償器で複数需要家を補償する場合の線路損失最小化理論を導出する。次に,非連続補償量を考慮した線路損失最小化理論を用いて,実際の配電系統モデルにおけるシミュレーションを実施し,無効電力補償と損失低減の特性を明らかにする。さらに,モデル配電系統を用いて実験をし,無効電流補償特性と損失低減効果を検証する。 2.無効電流を低減するための補償装置の種類・配置と線路損失低減効果 まず,補償装置の種類・配置と線路損失低減効果を導出する。新たなスマートグリッド構築や補償装置の新規設置をする場合の無効電力補償装置,自動力率調整装置,進相コンデンサおよびそれらの容量・配置と線路損失低減効果の関係を理論導出する。これにより,導入機器のコストと損失低減効果の関係へと展開する。次に,補償装置の種類・配置と線路損失低減効果の関係を実際の配電系統のパラメータを用いたシミュレーションにより特性を明らかにする。さらに,配電系統モデル実験装置に,新たに補償器を追加した場合の無効電力補償と線路損失低減効果の特性を確認する。
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次年度の研究費の使用計画 |
模擬配電系統の実験装置の整備として,リアクトル付き進相コンデンサバンク用のリアクトルとコンデンサ,配電系統の電圧電流検出器、制御装置用IGBTやA/Dコンバータが新たに必要で,物品費(消耗品費)として30万円を計上している。 研究を進める上での調査や成果発表旅費として,70万円計上している。具体的には電気学会産業応用部門大会(山口大学,3泊4日2名), 国際会議(アメリカ合衆国)などを予定している。 人件費として,実験補助・データ整理に10万円,論文掲載料や学会参加費として20万円を予定している。
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