パワー半導体モジュール基本構造の非真空雰囲気環境における作製方法とその根拠の提示を目標とし、強度特性に課題をもつ良熱伝導性セラミックス-金属間の接合に集中して進めた結果を以下にまとめる。 1.焼結プロセスと表面仕上げ程度の異なるAlNセラミックスを用いて接合試験を行ったところ、Al金属の水素チャージとそのディスチャージにより、金属表面の酸化被膜成長と残留応力によるものと思われる接合界面のクラックや隙間を回避できること、強度特性に優れるセラミックス部材を用いた場合には、セラミックスの粒界破壊を生じることなく接合可能であり、柔軟かつ強度に優れる傾向にあることを確認した。これらから、パワー半導体放熱基板-金属電極間の非真空雰囲気における接合において、金属の水素チャージが有効な表面処理方法であることを示せたものと考える。今後、水素チャージ条件を最適化する方向で実験的検討を進めていく予定である。 2.水素チャージ処理の有無に伴う異種部材間の接合界面微構造と電気インピーダンスを比較したところ、両者に対応する明確な差異を見出した。すなわちサブミクロンレベルの隙間や亀裂が接合体の電気的特性として検出でき、熱環境下でその場測定しうることを確認した。また、SiC-Al金属電極-AlNセラミックス放熱基板間の接合体の界面微構造を比較したところ、金属の水素チャージの有無に寄らず隙間等なく密着して接合するが、水素チャージ処理はより傾斜的な接合界面を形成することを見出した。 3.金属の水素チャージ条件とした通電電流密度の増加に合わせて金属表面からの水素放出温度が低温化し、その量も増加の傾向にあることを検出した。このことは、前年度、接合に対する水素効果のモデルとして議論した接合環境における還元雰囲気の現出だけでなく、水素導入に伴う金属表面の塑性変形性の付与の双方を妥当な要因として裏付けるものである。
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